パート1 – vH2O2(過酸化水素蒸気)による無菌アイソレーターの除染に関する質疑応答

無菌アイソレーター内のH2O2蒸気
Joni Partanen
Product Manager
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産業製造・プロセス
産業計測
ライフサイエンス

ウェビナー『vH2O2による除染:無菌アイソレーターにおけるサイクル開発の最適化』(英語のみ)では、多くの興味深い質問をいただきました。2部構成のブログシリーズの第1回では、ゲストプレゼンターであるArdien ConsultingのRick Nieskes氏とヴァイサラのプロダクトマネージャーであるJoni Partanenが、時間の都合によりウェビナー中に対応できなかった質問に回答します。ウェビナーをご覧になっていない場合は、録画をご覧ください(英語のみ)。ウェビナーQ&Aブログのパート2もご確認いただけます。

質問:アイソレーターにvH2O2除染を行う場合、乱流または一方向流のどちらが好ましいですか。

Rick Nieskes:アイソレーター内でvH2O2を最大限に均一にするには、乱流が好ましいと思います。とはいえ、空気流量を減少させるだけで、一方向流によって適切な乱流が発生する可能性があります。不確かな場合は、乱流の程度が適切かどうかを気流可視化調査によって判断することをご検討ください。

質問:特定の除染レベルを達成するために必要な過酸化水素蒸気の量や暴露時間を推定することで、vH2O2除染サイクルを開発できますか。

Joni Partanen:Rickのプレゼンテーションから、サイクル開発に関して参考になる洞察が得られると思います。バリデーションの実施中に相対水分飽和度とvH2O2濃度を計測すると、サイクルの有効性をより深く理解できます。連続計測を行うと、サイクル中に発生する変化を確認できるほか、季節的な条件が影響しているかどうか、または機器に不具合が生じ始めているのではないか、といったことを把握できます。

質問:実施中のバリデーションに酵素インジケーターを使用することは推奨されますか。

Rick Nieskes:酵素インジケーターはバリデーションに有効なツールであり、実際の状況を明らかにするのに役立ちます。酵素インジケーターは、バイオロジカルインジケーターを補完する貴重な指標であると考えていますが、必ずしもバイオロジカルインジケーターの代わりになるとは限りません。

質問:一般的に、アイソレーターにかかる圧力はどのようなものですか(正圧、陰圧、環境圧など)。

Rick Nieskes:無菌アイソレーターについては、室内に対して10パスカル以上の正差圧を確保することをお勧めします(PIC/S PI 014-3による)。これは、グローブの使用中に発生する動的な圧力変動を考慮して、アイソレーターの設定値が常に約60パスカルであることを意味します。

質問:HPP272 センサの出力チャネルを2つにしているのはそのためですか。その場合、温度と湿度を計測するには何が必要でしょうか。

Joni Partanen:そのとおりです。HPP272 プローブのアナログ出力は、2チャネルのみに制限されています。より多くのパラメータにアクセスするには、2つのソリューションがあります。まず、デジタルModbus RTU通信を使用することで、すべての計測パラメータを読み取り、診断結果を取得して、センサパージのタイミングを最適化できます。3つ以上のアナログ出力が必要な場合は、HPP270をIndigo520などのIndigoホストデバイスに接続できます。Indigoホストデバイスを使用すると、アナログ出力チャネルを最大4つにできます。Indigo500には、ローカルディスプレイ、設定機能、データの可視化など、その他にも便利な機能が搭載されています。

質問:液体の場合、H2O2はろ過システムで捕捉されますか。

Rick Nieskes:

これは、システムの設計と、vH2O2がHEPAフィルターを介してアイソレーターに供給されるか、HEPAフィルターを通過せずに直接供給されるかによって異なります。通常、HEPAフィルターを介してvH2O2が供給される場合、vH2O2がHEPAフィルターのろ材に吸収されるため、曝気時間が長くなります。 

システムに関係なく、アイソレーターに供給されるvH2O2の量は、飽和状態や飽和状態に近い状態から最終的には凝縮して気液平衡状態になるvH2O2の処理次第です。

質問:プレゼンテーションでは、相対水分飽和レベルを85%とされていました。しかし、凝縮は100%RSで発生します。相対水分飽和度を100%にするのは、論理的ではないのでしょうか。

Joni Partanen:望ましい設定値はある程度、プローブの位置によって異なることに留意してください。たとえば、環境の幾何学的中心にセンサを配置する場合、その場所の温度は窓よりも高いと想定されるかもしれません。凝縮は最も温度が低い場所で始まります。それを考慮すると、温度の低い場所では、計測場所で目標に達するよりずいぶん前に水蒸気が凝縮し始める可能性があるため、相対水分飽和度の目標を100%RSに設定するのはリスクが伴う場合があります。

質問:さまざまな素材(アルマイトなど)の吸収や放出に関するデータはありますか。

Rick Nieskes:vH2O2の除染効果に対する素材の相対的影響を比較した書籍があります。しかし、さまざまな素材によるvH2O2の吸収と放出は場合によって異なります。実際、私はこの目的のために自分独自のプロトコルを用意しています。

質問:HPP270のセンサの触媒層はチャンバーのppmに影響しますか。

Joni Partanen:センサの触媒層はわずか数平方ミリメートルのため、プローブフィルター内の環境への影響はほとんどありません。HPP270シリーズ プローブ用のPEROXCAP®の開発においては、吸収性のある素材を使用することで計測精度に影響を与えないように、プローブの素材に特に注意を払いました。テストでは、ステンレス鋼とPTFEがプローブに最適な素材であることが証明されました。

質問:vH2O2除染には熱マッピングが必要ですか。熱マッピングを行う方法について、推奨事項を教えていただけますか。 

Rick Nieskes:vH2O2除染のバリデーションには温度マッピングが必要です。この作業により、アイソレーター内の温度が低い場所と高い場所を判断するにあたって、ケミカルインジケーター、酵素インジケーター、バイオロジカルインジケーターを使用して特定ができます。プレゼンテーションでは、これに関する汎用的な仕様を説明しました。

編集者注:温度マッピングの詳細については、ウェビナー『簡単なマッピング』(英語のみ)と、アプリケーションノート『チャンバーマッピングの8つのステップ』を参照してください。    

Ardien Consultingの詳細やRick Nieskesの連絡先もご確認いただけます。