中日本高速道路株式会社様|日本における雪氷対策作業の最適化

Optimizing snow and ice removal in Japan - NEXCO Central
Japan
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道路気象
気象・大気環境

日本の多雪地帯として知られる北陸地方における高速道路の雪氷対策作業は、中日本高速道路株式会社様(以下、NEXCO中日本様)の重要な作業の一つです。NEXCO中日本様は、中部日本エリアの高速道路の建設、改築、維持、修繕、その他の管理を効率的に行っています。

気象予報に加え、高速道路の多くの場所に設置されている気象観測局や定点カメラ、交通管理巡回、雪氷巡回などによって高速道路上の気象状況や路面状況のデータを収集しています。雪氷対策作業の実施判断は、これらのデータに基づいて保全・サービスセンターの当番班長が計画し、最前線にいる作業者がこの作業計画を基に作業を行います。雪氷対策作業の計画や実施判断には、地域の気象特性などに関する相応の知識と経験が要求されます。

ブラックアイスバーンと凍結防止剤散布

雪氷対策作業を行うにあたり、実際の高速道路の路面状況を把握することは重要です。気象観測所を設置し気温や路面温度などのデータを収集していますが、定点観測となるため、気象観測所間の路面状況については、雪氷巡回員や交通管理隊員による目視によって直接路面の状況や刻々と変化する降雪状況を確認し、情報を補完します。また、夜間に多く発生しやすいブラックアイスバーンの確認は車内からの目視のみでは正確な判断が難しく、降車して路面状況を確認することもあり、危険が伴います。

また、雪氷対策作業として除雪作業の他に塩化ナトリウムを全面散布します。日本では塩化ナトリウムに乾燥剤などの添加物を入れることができないため、一度車両に積載した凍結防止剤は使い切る必要があります。さらに、凍結防止剤の塩分は橋梁の腐食にも影響があります。適切なタイミングで、適切な箇所に、適切な量を散布し使用量を減らしていくことは道路の機能維持のためにも凍結防止剤散布作業における大きな課題です。

そこでNEXCO中日本様は、気象観測所間のデータを補完し、高速道路ネットワーク全体での凍結防止剤の使用量を最適化する方法を探し始めました。

導入前評価試験

NEXCO中日本様は、評価試験を経て「ヴァイサラ MD30 モバイル路面凍結検知センサ」を管理道路の雪氷対策向けに金沢支社などに導入しました。金沢支社は、北陸自動車道、東海北陸自動車道、舞鶴若狭自動車道を管轄しており、その管理延長は合計340.3kmに及びます。

小型複合モバイルセンサ「ヴァイサラ MD30 モバイル路面凍結検知センサ」(以下、MD30)は、主要な道路気象項目(路面状態、摩擦係数、膜厚(水/氷/雪)、路面温度、大気温度、露点温度、相対湿度)を計測することができます。NEXCO中日本様は、MD30の導入を検討するにあたり、雪氷対策期間中に同支社管内において実際のセンサを使用した評価試験を行いました。

現地に設置されている気象観測局で収集した気温と路面温度の計測値および振り子式摩擦係数試験で得られた摩擦係数と、MD30から得られたそれぞれの計測値を細かく比較しました。

環境・技術管理部 品質検査課 課長の中村 貴男氏は次のように述べています。「この評価試験で、いずれの計測項目においても相関係数が0.8~0.9と非常に高い結果を得られ、定点で設置されている気象観測局間のデータを十分に補完できると判断できたことがMD30を本格的に導入する決め手となりました。また、データを数値としてだけではなく、ビジュアル化されたものでもすぐに確認できることも評価のポイントとなりました。」

効果的なリアルタイムの計測データ

NEXCO中日本様は、評価試験で得られた良い結果を基に、MD30を数種の雪氷対策車両に取り付け、高速道路全体にわたって冬季の路面状態に関するデータを収集しています。

MD30は、主にパトロールカーや凍結防止剤散布車など稼働が多い車両に取り付けられており、パトロールカーはフロントバンパー部分に設置しています。NEXCO中日本様の金沢支社では、0.1秒単位でサンプリングされるように設定をし、収集した道路気象に関する計測データは雪氷対策作業の計画や判断をする際の意思決定への活用を計画しています。

MD30から収集されたデータは同社が構築しているシステムに取り込むことで、さまざまな雪氷対策への活用が期待されています。特に、摩擦係数は客観的な路面状況の数値管理に有効となっており、路面温度は凍結防止剤の散布作業の目安となる連続データとしてその有効性を認めています。さらに、北陸地方特有の高湿度による無降水凍結などの判断に露点温度が非常に有効であることも判明しました。

また、MD30 の導入により、特に夜間の路面状態の把握方法が大きく改善しました。変化する路面状況に迅速かつ効率的に対応できるため、より安全な道路環境を提供できます。また、本部でもリアルタイムでMD30からのデータを確認し路面状況を把握することができるため、作業員が危険を伴う降車しての目視確認をすることなく、すぐに対応を指示することができるようになりました。

NEXCO中日本様は、高速道路の利用者にとっても、冬季道路管理を行う作業者にとっても安全で安心な環境を提供に日々尽力しています。