環境に優しい冷媒の展開にヴァイサラのプローブが貢献

Woolworths の店舗(オーストラリア、ビクトリア州ハイデルバーグ)
Australia
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屋内/室内空気質
産業計測

オーストラリアとニュージーランドに展開するスーパーマーケットが、気候変動への取り組みとして新しく設置する自然冷媒システムに、最先端の二酸化炭素監視装置を活用しています。

概要

Woolworthsグループは205,000人を超えるスタッフを抱え、毎年9億人の顧客にサービスを提供しています。大規模で多様性のある組織として、Woolworths社は自社の持続可能性へのアプローチが国の経済、地域社会、環境に影響力をもつことを認識しています。こうした考え方はグループの2020年の企業責任戦略に反映されています。

この戦略は20の主要なターゲットを中心に構築され、自社事業が環境に与える影響を最小限に抑えるための責任だけでなく、自社の顧客、地域社会、サプライチェーン、チームメンバーとの関わりについても言及しています。この戦略の20のコミットメントの1つが、自然冷媒を採用し、店舗内の冷媒漏れを2015年比で15%削減(二酸化炭素換算)することです。 

一般的に二酸化炭素(CO2)は理想的な自然冷媒だと言われています。しかし、二酸化炭素は不燃性で毒性がない無色無臭の気体である一方、高濃度を吸い込むと意識不明に陥り、場合によっては死に至ることもあります。こうした安全上の理由から、潜在的な漏れを迅速に検出するためには、正確で信頼性の高い監視が必要です。Woolworths社と同社のコールドチェーンパートナーであるEmerson社は、Woolworthsグループが店舗での自然冷媒の使用を拡大する際に、安全面において重要な役割を果たすことができる、正確で信頼性の高いCO2監視装置を必要としていました。

この8年間、ヴァイサラのCO2プローブは、Woolworthsグループの店舗で広く採用され、さまざまなメリットをもたらし、グループの戦略目標の達成を支援してきました。

Vaisala HMW90 in Woolworth store in Heidelberg, Australia
HMW90 series transmitter on a wall in the store.

世界的に進む自然冷媒への移行

人工冷媒ガスは、長年にわたってさまざまな産業で利用されてきました。しかし、クロロフルオロカーボン(CFC)がオゾン層破壊の原因になるとして、1987年のモントリオール議定書を受け、段階的に廃止されました。成層圏オゾンに対する有害性が比較的低いハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の生産が世界的に増加しましたが、HCFCは非常に強力な温室効果ガスであるため、ハイドロフルオロカーボン(HFC)がHCFC以上に普及しました。ただし、HCFCとHFCの地球温暖化係数(GWP)は二酸化炭素の数千倍であるため、多くの国で HFC の使用が削減されており、モントリオール議定書のキガリ改正(2018年)により、世界的にHFCを段階的に削減することが定められました。その結果、二酸化炭素などの自然冷媒の採用が強く求められています。

オーストラリアとニュージーランドにおいて、WoolworthsグループはGWPがきわめて低い冷媒への移行を先導しています。Woolworths社のシニアコミッショナーであるLuke Breeuwer氏は、次のように述べています。「より優れた方法が現れないかぎり、スーパーマーケットの店内やバックヤードで使われるあらゆる冷媒が、最終的には超臨界CO2に移行すると思っています。」 

「CO2冷媒技術は近年著しく向上しており、クイーンズランド州の一部では今のところ湿度水準次第でハイブリッド型CO2システムを導入する必要があるものの、それ以外のほとんどの地域で導入できるようになっています。」

超臨界CO2冷媒システムへの移行には多額の設備投資が必要であり、他のスーパーマーケットでは実現まで時間がかかる場合があります。Woolworths社のLuke氏は次のように述べています。「この新システムの推進について、財務部門から推奨されています。環境面で利点があるだけでなく、将来のある時点で維持できなくなる冷媒資産を残さないために推進が求められているのです。この取り組みにかかる設備コストは、この技術を店舗内の暖房にも利用することで相殺されます。」

二酸化炭素の監視

顧客、スタッフ、請負業者の健康と安全を守るために、従来の店舗では約6台のCO2センサが必要になります。しかし、超臨界CO2冷媒の店舗では、一般的に24台以上のセンサが必要になります。

Emerson社は、Woolworths社の多くの店舗にある冷媒とHVAC制御システムのサプライヤーです。Emerson社のコールドチェーンANZシニアビジネスマネージャーであるShannon Lovett氏は、当時を振り返って次のように述べています。「8年ほど前に国内メーカーのCO2センサを評価しましたが、品質の問題や故障が多くあったため、『概念実証』としてヴァイサラのセンサを1つの店舗に設置しました。」

「嬉しいことに、ヴァイサラのプローブは非常に優れた性能を発揮したので、今ではオーストラリアとニュージーランドのWoolworthsグループの店舗にも導入しています。また、さまざまな類似の用途においてヴァイサラの湿度温度センサを活用しています。他のCO2 センサと比較するとヴァイサラの計測機器は高額ですが、請負業者に非常に好評でした。ヴァイサラ製品の高い信頼性により所有コストが下がったと実感しています。」
Luke Breeuwer氏は、高品質の計測機器に投資することの長期的な利点についてShannon氏に同意し、「ヴァイサラのGMP252 CO2プローブとIndigo 200シリーズ変換器のModbus通信機能は、当社にとって大きな利点です。必要な配線の量が大幅に減ることで、複雑さとコストの両方が低下しています」と付け加えました。

ヴァイサラのプローブの信頼性について、「ヴァイサラのセンサを多数稼働させていますが、故障や緊急対応が発生していないため、突発的なメンテナンスコストは今のところ無視できるほど小さいと言えます。2年ごとにセンサの校正チェックを行う必要がありますが、センサが非常に安定しているおかげで、結果はいつも仕様の範囲内に収まっています。これは素晴らしいことです」と、Luke氏は述べています。

Luke氏はヴァイサラのCO2センサの精度が問題になったときのことを振り返ります。設置したプローブから異常に低い計測値が検出されたため、現場に向かう必要がありました。しかし、センサを信用していたLuke氏らは何か別の真相があるはずだと考えました。調査した結果、(計測地近くの)コンクリートを硬化させる炭酸化プロセスにおいて、CO2を吸収する傾向があることが判明したのです。

最先端センサ技術

ヴァイサラ CARBOCAP® GMP252 CO2プローブは、安定した正確な二酸化炭素計測が求められる湿度の高い過酷な環境用に設計された、インテリジェントなCO2センサです。特筆すべき点は、プローブに第2世代CARBOCAP®技術が使用されている点です。CO2計測に加え、可変フィルタにより、吸収が発生しない波長での基準計測ができます。この基準計測により光源の潜在的な変化や光路の汚染が補正されるため、長期安定性に優れたセンサを提供できます。また、プローブは温度、圧力、酸素、湿度を自動的に補正し、-40〜+60°Cの動作温度範囲で、センサは正確に0〜10,000ppmのCO2を計測できます(精度は低下するものの30,000ppmまで計測可能)。

Vaisala Indigo200 series transmitter
Indigo200 series transmitter.

ヴァイサラ技術の特長 

Woolworths社から見たヴァイサラ技術の特長について、Luke氏は次のように述べています。「大きな強みは信頼性、低メンテナンス、そしてModbus通信です。また、柔軟性も重視しています。というのも、店舗内のCO2レベルが過度に上昇していないかを確認するためにも、ヴァイサラのプローブを利用しているからです。監視データを使用して、換気を自動的に制御して最適化することで、これを達成しています。」

Emerson社では、ビル管理システム内にプローブを統合しています。Shannon氏は、ローカルアラーム用にデュアルリレー出力を利用できる機能が特に便利な機能だと強調しています。「信頼性はもちろん大きな利点ですが、メンテナンス要件がほとんどなく、2年の校正間隔とModbus通信を利用できることは、当社にとって競争上の強みにつながっています」と、同氏は述べています。
 

将来を見据えた対応

Woolworths社は、企業責任戦略において自然冷媒の役割を明らかにすることで、非常に明確な意思表示を行っています。2年前には、グループ内に超臨界CO2冷媒の店舗はありませんでしたが、現在は7つの店舗で転換が行われ、来年には大都市圏の最大12店舗で展開する予定です。 

総括としてLuke氏は次のように述べています。「冷媒システムをCO2冷媒にすることで、温室効果ガスの排出量を削減できるとともに、運用コストを削減することもできます。ただし、それには信頼性の高いCO2監視が非常に重要です。信頼性の高い監視は、漏れの特定と削減に役立つとともに、スタッフと利用者の安全を守ることができます。」

本事例はPDFでもご覧いただけます。詳細については、当社にお問い合わせください

画像提供:Woolworths社(オーストラリア)