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廃棄物発電プラントで実証された脱炭素技術

アマー・バッケ施設とコペンヒルセンター
アマー・バッケ
コペンハーゲン, Denmark
Published: Mar 17, 2022
バイオガス精製
持続可能性

デンマークの研究者は、廃棄物焼却炉の排出ガスから大部分の二酸化炭素(CO2)を除去することが可能であると実証しました。研究者たちはそのプロセスの実行可能性を実証することで、気候変動への取り組みにおいて鍵となる技術を開発できたと考えています。コペンハーゲンではパイロットプラントが数か月間稼働しており、新しいガスモニタリング技術によってプラント効率の最適化が可能になりました。

画像クレジット:Hufton&Crow / ARC

世界のリーダーがネットゼロの達成に向けたコミットメントを目指す場合、主な目標となるのは、炭素の回収・貯留(CCS)や炭素の回収・利用・貯留(CCUS)などの脱炭素技術を開発して活用することです。そのため、デンマーク工科大学(DTU)の研究者は、コペンハーゲンにある非常に革新的な廃棄物焼却プラントと協力して、排気ガスから二酸化炭素(CO2)を回収するプロセスの開発に取り組んでいます。このプロジェクトでは、ヴァイサラの先進的なガス分析装置を利用して炭素回収の効率を計測し、CCUSの実行可能性を評価しています。

研究者たちは、年間56万トンの廃棄物を処理する能力を持つ北欧最大規模のコジェネレーション(CHP)プラントであるアマー・バッケ廃棄物発電プラントの焼却炉の排気ガスからCO2を除去するパイロットプラントを開発しました。このCHPプラントは、コペンハーゲン地域の5つの自治体が共同所有するコペンハーゲンの廃棄物管理会社ARC(Amager Ressourcecenter)が開発したものです。革新的な技術を多数採用し、屋上には人工スキー場を備え、コペンヒルという有名なアウトドアアクティビティセンターの一部となっています。

パイロットプラントは、廃水処理、バイオガス精製、嫌気性消化、廃棄物焼却などのプロセスの排出ガスからCO2を回収するために開発されました。それだけでなく、研究者たちは回収したCO2を利用する方法も探っています。このパイロット炭素回収プラントは、アマー・バッケに設置される以前は廃水処理プラントで運用されていました。DTUの研究者、Jens Jørsboe氏はこう説明します。「テクノロジー自体は新しいものではありません。しかし、私たちの取り組みでは、炭素回収のコストを下げ、それを経済的に実現可能なものとすることに焦点を当ててきました。」

アマー・バッケの焼却炉からの排出ガスは、電気集じん機(ESP)を通過して粒子状物質が除去されます。NOx化合物は選択的触媒還元(SCR)によって、硫黄酸化物はスクラバーによって除去されます。煙道ガス内には依然として高レベルのCO2 が残っているため、パイロット炭素回収プラントの主な目的は、その回収の実現可能性を調査することです。そのために、ビーズとモノエタノールアミン(MEA)溶媒を充填した柱状のパイプの中をガスが上方に通過するようにして、ガスからCO2を取り除きます。次に、溶媒は脱着装置に送られ脱着装置がCO2を除去します。この時点でほぼ純粋な二酸化炭素が得られます。MEAは再利用のために再生成されます。現在は研究プロジェクトとして精製したCO2を大気に放出していますが、実際に商用として運用を開始する際には、CO2をさまざまな産業用途で活用できます。たとえばCO2を、サバティエプロセスによってニッケル触媒の存在下で高温高圧をかけて水素と反応させ、メタン(ガス燃料)と水を精製することができます。再生可能エネルギー(太陽光、バイオガス、風力など)を使用した電気分解によって生成された水素を使用すると、環境にやさしい方法で燃料を製造できます。

CO2は、そのほかにも食品・飲料、冷凍・冷蔵、医療、園芸、消防、溶接などさまざまな業界で使用されているため、CO2を商業化可能な品質と規模で精製できれば、多数の市場で販売することができます。

炭素回収効率のモニタリング

炭素回収プロセスは、そのプロセスの前後でCO2濃度を継続的にモニタリングできて初めて最適化できるようになります。幸運なことに、このパイロットプラントが建設される前に、フィンランドのヴァイサラがインラインCO2・湿度・メタン監視装置を開発していました。

焼却炉からの排気ガスは腐食性で爆発の可能性があるため、これまでインラインモニタリングを行うことはできませんでした。最近までは、プロセスの外部で分析用サンプルを抽出するしか方法はありませんでした。しかしこの方法は、サンプルラインから湿度を除去する必要があったり、頻繁な再校正が必要だったりするなど、多くの課題があり、プロセスの制御と最適化を行うのに適していません。

ヴァイサラがMGP261を開発したことで、このようなモニタリングの課題はすべて解消されました。特にその後に登場した姉妹製品MGP262は高濃度CO2の計測に適しており、パイロットプラントの脱着装置の後に精製されるほぼ純粋なCO2を継続的にインラインモニタリングする理想的な環境が整いました。

パイロットプラントでは合計3個のヴァイサラプローブを採用しています。MGP261は流入する焼却炉の排気ガスをモニタリングし、MGP262は抽出されたCO2の純度を計測します。3つ目のプローブはヴァイサラ CARBOCAP® GMP251 CO2プローブです。このプローブで、パイロットプラントの排気ガス中のCO2(炭素回収後)のレベルをチェックします。

独自のモニタリング技術

3個のモニタリングプローブにはすべてCARBOCAP®技術が採用されており、この技術ではファブリ・ペロー干渉(FPI)による可変フィルタを活用しています。対象物の計測に加え、マイクロメカニカルFPIフィルタによって、吸収の発生しない波長でリファレンス計測が可能です。この電気的可変フィルタでリファレンス計測を行う際には、赤外線のバンドパス波長帯を変化させ、吸収帯から非吸収帯へと切り替えます。リファレンス計測により光源の潜在的な変化や光路の汚染が補正されるため、センサの長期安定性を実現できます。 

MGP261とMGP262の中では、同じ光学フィルタを使って湿度とCO2が計測され、2つ目の光チャネルがメタンを計測します。これはさまざまな点で、実験室用の分光計が持つ分析力と産業用プロセス制御機器のシンプルで頑丈な設計を兼ね備えたものです。

監視装置の性能についてJens Jørsboe氏は次のように話します。「マルチガスプローブの精度と信頼性に満足しています。特に、廃棄物焼却による煙道ガスの管理について多くのことを学べたからです。化石燃料の燃焼による排出ガスについては多くのことが知られていますが、廃棄物の焼却による排出ガスについてはほとんど情報がありませんでした。

ヴァイサラプローブで採用されている技術は運用コストを最小限に抑えるのにも役立っています。プローブは効果的に自動校正されるので、保守の必要性が最小限に抑えられ、ダウンタイムを回避できます。」

コペンハーゲンと世界各国での炭素回収

継続的なインラインモニタリングのメリットを活用することで、研究者は12種類のパイロットプラント構成を評価し、炭素回収の性能を最適化できました。これで炭素回収プロセスの実行可能性が実証されたため、次のステップは炭素の貯留と利用の相対的な利点を評価することでした。Jens Jørsboe氏は次のように話します。「現時点では、CO2を利用するには、CO2をさらに純化させるコストが必要になり費用が高額になります。そのためアマー・バッケプラントの所有者は、年間50万トンのCO2を回収する能力を持つCCSプラントを実現するために、15億DKK(2億3,000万米ドル)を申請することを計画しています。デンマークの州が適切な規制の枠組みと十分な資金を用意してくれれば、この性能を実現できます。このプラントには、パイロット炭素回収プラントで実証されたアミンスクラビングプロセスが採用されるでしょう。」

廃棄物の内容によりますが、1トンの都市ごみ(MSW)を焼却すると、それに関連して0.7〜1.7トンのCO2が放出されます。したがって、廃棄物焼却によるエネルギー生成は、化石ガスの燃焼よりも炭素集約度が高くなります。炭素回収することで、許容できないほど高レベルのGHGを発生させることなく、ますます高まる都市ごみ処理の必要性に対処する方法がもたらされます。

Jens氏は、将来的にこの技術を世界中のすべての廃棄物焼却炉に活用できると考えています。ecoprogの最新データによると、これは年間約4億トンの廃棄物処理能力を持つ約2,500WtEのプラントに相当します。 
さらに余熱の回収も可能であるため、地域の産業や暖房ネットワークに転用できます。 

Jens氏は次のように総括します。「グラスゴーで最近行われた COP26 気候変動枠組条約締約国会議では、CO2などの温室効果ガスの世界全体の排出量を削減するのに役立つ技術が喫緊に必要であることが浮き彫りになりました。多くの国が正味ゼロの目標に取り組んでいます。アマー・バッケ廃棄物発電プラントにおける私たちの仕事は、それらの国に、目標を達成できる方法の1つとして、この技術に投資する機会を提供することです。」