湿度・露点計測の基礎知識

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湿度計測および管理は、さまざまな工業分野で必要とされています。計測範囲、温度・圧力条件に対する耐性、結露からの応答時間の速さ、危険環境での稼働性、設置・校正オプションなど、用途によって湿度計測器に求められる要件も異なります。

湿度とは ? 湿度項目の基礎知識

水蒸気分圧
湿度とは気相状態の水分のことであり、正確には水蒸気と呼ばれます。気体である水蒸気には、ドルトンの分圧の法則をはじめ、気体に関する一般的な法則の多くが当てはまります。
ドルトンの法則によると、気体の全圧は、各気体成分の分圧の和に等しくなります。
Ptotal = P1 + P2 + P3…

水蒸気圧とは
水蒸気圧(Pw)とは、大気中または気体中に存在する水蒸気が加える圧力のことです。
水蒸気の最大分圧は温度によって決まり、この最大分圧は飽和水蒸気圧(Pws)と呼ばれています。温度の上昇に 伴い、飽和水蒸気圧が上昇し、大気が含 むことのできる水蒸気の量が増加しま す。従って、暖かい空気は冷たい空気よ りも多くの容量の水蒸気を含むことが 出来ます。

圧力が湿度に与える影響
ドルトンの法則によると、気体の全圧が変化すると水蒸気を含むすべての気体成分の分圧が影響を受けます。例えば、全圧が2倍になると各気体成分の分圧も2倍になります。
エアコンプレッサーでは空気が圧縮されて圧力が上昇することで、空気から水分が絞り出されます。
これは水蒸気の分圧(Pw)が上昇する一方で、飽和水蒸気圧(Pws)は主に温度に依存するためです。レシーバータンク内の圧力が上昇してPwがPwsに達すると水分が液体に凝結し、最終的にはタンクから排出されます。

相対湿度
水蒸気を気体と考えると、相対湿度を定義しやすくなります。相対湿度(RH)とは、特定の温度における飽和水蒸気圧(Pws)に対する水蒸気分圧(Pw)の割合と定義できます。
%RH = 100% × Pw / Pws
定義式における分母(Pws)が温度の関数であるため、相対湿度は温度に大きく依存します。

露点温度
気体が冷却されて水蒸気が液相に凝結し始めるとき、結露が発生する温度を露点温度(Td)といいます。相対湿度が100%のとき、周囲温度は露点温度と等しくなります。露点が周囲温度より低ければ低いほど、結露の発生リスクは小さくなり、空気は乾燥していきます。
露点は飽和水蒸気圧(Pws)と直接関連しています。各露点の水蒸気分圧は簡単に計算することができます。ヴァイサラの湿度計算・変換ソフトはPC、スマートフォン、タブレットからもご利用いただけます。相対湿度と異なり、露点は温度に依存しませんが、圧力の影響を受けます。露点計測の主な用途としては、各種乾燥工程や、乾燥空気(ドライエア)の使用時、圧縮空気の乾燥時などが挙げられます。

霜点温度
露点温度が氷点下のとき(乾燥空気の時など)、凝結相が氷相であることを明確に示すために、霜点(Tf)という言葉を用いることがあります。氷の飽和水蒸気圧は水の飽和水蒸気圧と異なるため、0°C以下では常に露点よりも霜点がわずかに高くなります。

パーツ・パー・ミリオン
パーツ・パー・ミリオン(ppm)は、低湿度の単位として用いられることがあります。
乾燥気体や湿潤気体全体に含まれる水蒸気の割合を指し、容積/容積(ppmvol)または質量/質量(ppmw)で表されます。ppmvolは、次の式で定量的に表すことができます。
ppmvol = [Pw /(P - Pws)] × 106
ppmは、主に加圧された高純度乾燥ガスの水蒸気含有量を示すために用いられます。

混合比
混合比(x)は、乾燥気体の質量に対する水蒸気の質量の割合です。しばしば乾燥気体1kg当たりのグラム量(g/kg)で表されます。混合比は、乾燥工程や一般空調設備などで空気流量が分かっているときに水分含有量を計算するために使用されます。

湿球温度
一般に湿球温度(Tw)とは、湿った綿布でくるまれた温度計が示す温度値のことです。湿球温度と周囲温度の両方を用いて、相対湿度や露点を計算できます。例えば、空調用途で湿球温度を乾球温度と比較することで、蒸発冷却器の冷却能力を調べる用途に使われることがあります。

絶対湿度
絶対湿度(a)とは、一定の気温・気圧下おいて、湿潤空気の単位容積に含まれる水分の質量のことです。通常、空気1㎥当たりのグラム量(g/㎥)で表します。絶対湿度は、工程管理や乾燥業務でよく使用される計測項目です。

水分活性
水分活性(aw)は、平衡相対湿度に準じるもので、0~100%ではなく0~1の尺度で表されます。

エンタルピー
エンタルピーとは、0°Cの乾燥気体を現在の状態に変化させるのに必要なエネルギー量のことです。空調計算などに使われます。

環境条件が湿度計測に与える影響とは?

環境条件は、湿度や露点の計測に大きな影響を与えます。最良の計測成果を得るために、以下の環境要因を考慮する必要があります。

典型的な計測地点を選択

高温や低温のスポットは避け、湿度計測対象の環境を代表する典型的な測定ポイントを選択してください。扉、加湿器、熱源、空調装置の吸気口などに設置した変換器は、急激な湿度変化の影響を受けやすく、計測が不安定になることがあります。


相対湿度は温度に大きく依存するため、湿度センサが測定する空気や気体と同じ温度であることが重要です。2つの機器の湿度指示値を比較するときは、本体/湿度センサプローブと測定する気体との熱平衡が特に重要になります。


一方、露点計測は相対湿度とは異なり、温度に左右されません。しかし露点計測を行うときは、圧力条件を考慮する必要があります。

温度差に注意

プロセスに湿度センサプローブを設置するときは、センサプローブ本体の温度が低下しないよう注意が必要です。プロセスの内部と外部環境に大きな温度差がある場合は、たとえば、プローブ全体を内部に挿入し、ケーブルの差込口を断熱するなどの工夫が必要です。
結露の恐れがあるときは、ケーブルやプローブを伝って水滴が先端のセンサ部にたまらないように、プローブを水平に設置してください。

また、センサ周辺の空気の流れを確保してください。スムーズな空気の流れにより、湿度計測センサとプロセス温度が平衡状態になります。

 

高湿度環境に適した計測器

ここでは、相対湿度が90%を超える環境を高湿度環境とします。相対湿度が90%のとき、2°Cの温度差で湿度センサに結露が生じる可能性があります。換気されていないスペースであれば、乾燥するまでに数時間かかることもあります。ヴァイサラの湿度センサは結露からの回復機能を備えていますが、結露した水分が汚れていると、とりわけ塩分などがセンサに付着して計測精度に影響を及ぼします。センサの寿命が短くなりこともあります。結露が発生しやすい高湿度環境での計測には、ヴァイサラHUMICAP®湿度温度変換器HMT337などの、加温機能付きのセンサヘッドを備えたプローブをご使用ください。

低湿度環境に適した計測器

ここでは、相対湿度が10%未満の環境を低湿度環境とします。低湿度環境では、相対湿度計測器の校正精度が十分でない場合があります。しかし露点を測定できれば、湿度を把握する目安となります。露点計測には、ヴァイサラDRYCAP®製品シリーズをご用意しています。
圧縮空気システムの乾燥機が故障して結露が発生してしまったときには、計測器の機能を回復する必要があります。このような場合、露点センサは故障・破損してしまうケースが多いですが、ヴァイサラのDRYCAP®露点センサは高湿度への耐久性に優れています。。