正確な湿度計測によるガスタービン性能の最適化

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ガスタービンが最大効率で稼働するようにすることは、オペレーターの主要な目標です。今日の経済情勢において、生産性、ひいては利益を向上させるあらゆるものは実践されています。環境の観点からは、タービンの稼働効率を最大化し、排出量を最小限にとどめることも重要です。ガスタービンの出力を改善する方法はいくつかあります。燃焼入口に入る空気の湿度と温度を制御することは、タービンの効率、排出量および運転の信頼性に直接影響するため、最も重要なことの1つです。

低温で密度の高い空気により出力と効率が向上

ガスタービンの効率に関して、空気密度の影響はよく知られています。吸気密度が高いほど質量流量が増加し、その結果、タービンの出力と効率が向上します。空気密度は温度に反比例します。つまり、温度が上昇すると空気密度が低下し、ガスタービンの効率と出力が低下します。

吸気冷却は、暖かい環境や暑い環境では特に、高い気温によって引き起こされる効率の低下を補うために一般的に行われます。気温をわずかに下げるだけでも、出力の大幅な増加につながります。

気温が1°C低下すると、出力が最大0.5%増加する可能性があります。


吸気を冷却するために使用される技術にはいくつかあります。一般的な解決策は噴霧器です。これは、ノズルから空気の流れに水を注入し、水滴が蒸発するときに空気を冷却するシステムです。噴霧の二次的な利点として、空気の湿度が高くなることで、燃焼プロセスによって生成されるNOx排出量が減少します。暖かいまたは暑い条件での吸気冷却だけでなく、寒い気候で着氷を回避するためにも、湿度が重要な要素になる可能性があります。湿気のある空気が氷点に近い場合は、高速で動く氷の粒子が引き起こす損傷からコンプレッサーを保護するために、防氷システムが必要です。

最適な制御には正確な湿度情報が必要

吸気システム内の空気が高速であることを考えると、コストのかかる損傷や浸食を避けるために、水滴や氷の粒子がコンプレッサーやタービンに入るのを防ぐ必要があります。実際には、これは空気の湿度を飽和レベル未満に保つ必要があることを意味します。言い換えると、結露を防ぐためにシステムに入る空気の露点温度は、システム内の空気と表面の温度より低くなければなりません。制御システムには、計測の不確かさだけでなく、計測される空気の特性の変動や不規則性を考慮に入れるための安全マージンが必要です。ただし、計測の不確かさのために必要なマージンが大きいほど、効率は損なわれます。このような状況で、高レベルの計測信頼性は非常に効果的です。露点を正確に計測することで、システム内の結露または着氷の限界に可能な限り近づけて、冷却と噴霧、さらには加熱を実施できます。

湿度を表現するさまざまな方法

用途に応じて、湿度を表すためにさまざまな表現が使用されます。表現方法には、相対湿度、露点温度、湿球温度などがあります。

相対湿度(RH)は、特定の温度での飽和圧力に対する水蒸気の分圧の比率です。RHはパーセンテージで表され、一般に周囲の空気の湿度を表すために使用されます。RHを使用することの欠点は、温度に大きく依存することです。たとえば、RHが85%で気温が20°Cの場合、気温が2°C下がるだけでRHは96%になります。タービン入口の湿度を計測するためにRHを使用する場合、この依存性に留意する必要があります。冷却や加熱をしない場合でも、吸気システムの空気温度は変化するためです。主な影響は、コンプレッサーのベルマウスでの空気の加速による冷却であり、これにより数度の温度低下が発生する可能性があります。この冷却効果により、周囲温度が0°Cを超えていても氷が形成されるリスクがあります。

露点温度(Td)は、空気が一定の圧力で冷却されたときに、水蒸気が完全に飽和し、結露と呼ばれる液体の水が形成される温度です。100% RHでは、周囲温度は露点温度と同じですが、露点温度が周囲温度より低いと空気が乾燥するため、結露が発生するリスクが少なくなります。Tdを使用する主な利点は、温度に依存せず、結露条件に対する直接的なマージンが得られることです。

湿球温度(Tw)は、湿った覆いに包まれた温度計によって示される温度ですが、湿球温度と周囲温度を用いて、相対湿度や露点を計算できます。Twは湿度を計測する従来の方法ですが精度に限界があり、使用と維持にある程度のスキルが必要なため、大部分は直接計測に取って代わられています。上記の湿度パラメータはすべて圧力に依存しますが、吸気アプリケーションの場合、通常、圧力低下は非常に小さいために大きな影響はありません。たとえば、20°Cおよび1,013mbarで圧力が20mbar低下すると、RHは1.7%、Td は0.3°C低下します。

精度に影響を与える要因

湿度計測の精度に影響を与える要因は多くあります。最も明らかなのは基本的なセンシング技術です。ただし、高分子薄膜センサは、吸気モニタリングの最も重要なニーズである精度、堅牢性、長期安定性、および低いメンテナンス要件を満たすことが証明されています。入口の空気は飽和に非常に近く、結露が形成される可能性もあるため、センサはこういった条件でも精度を維持する必要があります。空気が結露する環境での湿度センサの課題は、センサが濡れた場合、空気自体が飽和していなくても、センサが乾くまで計測値が飽和状態を示し続けることです。この問題を克服するために、ヴァイサラは特許取得済みの加温プローブ技術を開発しました。これにより、センサ自体の結露を防ぐために、プローブの温度が周囲の気温より高く保たれます。システムと実際の設置位置によっては、直接の水しぶきによって湿度センサが濡れる可能性もあります。これを防ぐために、特別な取り付けアクセサリを提供しています。

発電所や汚染された環境では、吸入空気に汚染物質が含まれている可能性があり、これが長期的なセンサの精度に影響を与える可能性があります。こういった問題に対しては、ケミカルパージ機能のある高度なセンサを構成することができます。この機能は、汚染物質を蒸発させることで、センサエレメントを自動的に清掃します。