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DGA監視の不確かさを理解する

送電網の風景
Senja Leivo
Meet the expert: Senja Leivo
Published: Apr 6, 2020
送電

溶解ガス分析(DGA)は精密科学ではありませんが、変圧器内部の異常を検出および診断できる唯一の手法であるため、何十年にもわたって変圧器の状態を評価するために使用されてきました。1990年代後半から常時監視が可能になり、今日ではさまざまな常時監視装置を利用できるようになっています。しかし、それぞれに独自の技術仕様があることが課題となり、さまざまなオプションを比較して評価することは困難です。試験所のDGAも関係してくるため、事態はさらに複雑になっています。

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計測の精度
不正確なDGA結果では、特にガスの比率が異常ゾーンの境界に近い場合に、異常の診断を誤る可能性があります。また、濃度値が設定されている警報値に近い場合には、不正確な結果が変圧器での誤った対処につながる可能性があります。このため、不確かさと計測性能を理解することが不可欠です。

計測性能は、計測範囲、応答時間、感度、精度、安定性(経年劣化や過酷な環境に対する耐久性)といったダイナミクスによって定義されます。その中で、精度は品質にとって最も重要とされることが多く、何がよい精度かを理解することは大変難しいです。精度に再現性が含まれているかどうかもわかりません。再現性とは、一定の条件下で計測を繰り返したときに、計測機器が同様の結果をもたらす能力のことです。ただし、精度に長期安定性が含まれることはほとんどありません。多くの場合、再現性自体が計測の不確かさにつながる大きな原因になることはありません。しかし、精度の仕様にその他の不確かさがない場合は、実際の計測性能について誤った印象を与える可能性があります。

試験所のDGA
試験所のDGAは、手動プロセス適用時に常に存在する人的要因は言うまでもなく、オイルサンプルの品質から分析に使用される機器や規格に至るまでのさまざまな要素の影響を受けます。不確かさにつながる最も一般的な要因としては、オイルサンプリングの手法と品質、ガス抽出手法、使用されているガス分配係数、使用されている規格の差異などがあります。また、校正時に適用された基準以上の精度では計測できないことも理解しておく必要があります。

不確かさにつながる最大の要因は、通常、サンプルの品質です。H2やCOなどのガスのかなりの量がオイルから抜けたり、酸素や窒素などの空気中の周囲ガスがサンプルに混入したりする可能性があります。これらすべてが試験所での不正確な分析をもたらします。したがって、サンプル収集中のどの時点においてもオイルが空気に触れないようにすることが重要であり、サンプル容器はオイルで完全に充填されている必要があります。これを実現する最もよい方法は、高品質のシリンジかアルミボトルを使用することです。これらは空輸の際の気圧の変動に耐えることができます。
IEC 60567 規格では、各試験所がそれぞれの精度または不確かさを割り出し、この情報をユーザーが利用できるようにすることを推奨しており、これは認定試験所の要件となっています。不確かさに関する公式な数字が公表されていない場合、その試験所が国際的な試験所間比較テスト(ラウンドロビンテストと呼ばれる)に参加しているかどうか、その結果が公開されているかどうかを確認するといいでしょう。これにより、不確かさのおおよそのレベルを表す指標がわかります。試験所のDGAでは、IEC 60567とASTM D3612の2つの規格が世界中で一般的に使用されています。ASTMとIECは、それぞれ異なる温度(それぞれ0°Cと20°C)でのガス体積を計算していることに留意してください。それだけで、理想的なサンプルに対して定義されている濃度において最大8%の差異になります。監視装置と試験所からのDGA結果を比較する際には、このことを考慮する必要があります。計測されたppm値はすべて、まず先に同じ条件、20°C(IEC)または0°C(ASTM)のいずれか希望する方に変換する必要があります。

DGA常時監視装置
7つの主要な異常ガスすべてを計測するDGA常時監視装置は、通常のオイルサンプリング間隔の間に見過ごされてしまう可能性がある、変圧器内部のあらゆるタイプの異常を初期段階で特定できます。試験所の分析では、変圧器の状態評価を行うために役立つ入力を得るために、すべてのオイルサンプルとその分析が代表的である必要があります。常時監視装置は、試験所に比べて柔軟性が高く、平均化を使用することで診断用の信頼性の高いデータを確保することもできます。平均化なしでも、データを使用して、進展する異常を迅速に診断できます。試験所のサンプルを使用するよりも、常時監視によってガスの変化率を把握する方が信頼性が高くなります。

ほとんどの監視装置には、校正の時点でトレーサブルな基準ガスに照らして規定された精度があります。一方、一部の監視装置では基準として油中標準ガス調製法を使用する場合があります。納品されたDGA監視装置には、監視装置と基準の差を示す校正証明書が常に添付されている必要があります。また、校正証明書には、使用している基準方法と、校正が国際基準に対してトレーサブルかどうかが明確に示されている必要があります。ただし、報告されている精度の仕様は、運用中の実際の変圧器に対して、そのままでは適切でないということになります。変圧器内のオイルとその分配係数は、監視装置の校正に使用されていたオイルとその分配係数とは同一でない可能性が非常に高いためです。監視装置の性能の実態を知る一番の方法は、稼動中の変圧器に対して長期間、たとえば6か月間テストすることです。同時に少なくとも3つから5つオイルサンプルを取り、可能であればそのオイルサンプルを、プロセスの不確かさの値を提供できる独立した試験所2か所に分析してもらいます。

常時監視装置と試験所のDGAの比較
常時監視装置を試験所の基準値と比較して評価する場合、サンプルの品質と試験所の手順の不確かさを考慮する必要があります。さらに、試験所か常時監視装置かに関係なく、すべての分析方法にはそれぞれの不確かさがある点に注意することが重要です。結果を比較し、監視装置の性能について結論を出す際には、これらを考慮する必要があります。また、サンプルが完全であっても結果に多少の違いがあり、使用する方法が別の規格に従っていると偏差が大きくなる可能性があることも覚えておく必要があります。

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