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食品・飲料 – 匠の技なのか科学なのか?

A chef assembling a hamburger
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毎日のように、世界中の政治家が自分の決定について「科学的根拠に基づいている」と言っているのを耳にすることがあります。一般の人々も、さまざまな仕事の裏に科学があることを気付く機会が増えています。以下では、科学が食品・飲料業界をどのように牽引しているのか、特にヴァイサラの技術が持続可能な食品生産の最適化にどのように役立っているのかに焦点を当ててご紹介します。

食品・飲料業界では、匠の技が重要な役割を果たしています。包装や広告、製品開発においては創造性とイマジネーションが不可欠です。しかし、ヴァイサラは、科学が圧倒的な役割を果たしていると考えています。科学は、計測技術の開発、製造レシピの開発、プロセスの最適化、安全対策、品質の確保、製品の一貫性の確保、持続可能性の向上において中心的な役割を果たしています。今後、科学は課題の克服にどのように役立っていくのでしょうか。

 

課題

FAOによると(1)、2020年の時点で世界の3人に1人(23.7億人)は十分な食糧を確保できませんでした。その影響が最も大きかったのはアフリカとアジアでした。その一方で、肥満と食品廃棄物が主な課題であった国もありました。食品の安全性、栄養、確保のしやすさが、どれもますます大きな課題となっています。

水不足とは、一般的な要件を満たす真水を十分に確保できないことを指します。その原因は、気候変動(干ばつ)、水質汚染、水の過剰使用または非効率的な使用、インフラの不足や機能不全などです。国連によると(2)、適応策がなければ、年間のうち少なくとも1か月にわたって十分な水を確保できない人の数が、現在の36億人から2050年には50億人以上に急増するとされています。この課題においても、効率化と廃棄物の削減が必要です。

現在、気候変動によって干ばつ、洪水、ハリケーンなどが発生し、作物が壊滅的な被害を受けています。国連防災機関によると(3)、気候に関連した災害は過去20年間と比べるとほぼ2倍になっています。そのため、農業生産体制の回復力を高める必要があります。

多くの食飲料品で保管可能期間が限られているため、食料・飲料業界には通常以上にリスクがあり、サプライチェーンの問題の影響を受けやすいという特徴があります。そのため、回復力を高めて事業継続性を確保するための対策が強く求められています。コストと持続可能性の問題に加えて、サプライチェーンは短く、速く、安全で、追跡可能である必要があります。消費者からは、持続可能な製品だけでなく、プラスチックへの依存度が低い、よりよい包装が求められています。

安全で、健康的で、栄養価の高い食品を求める消費者のニーズは高まり続けているといえます。そのため、メーカーには、より的確な情報を食品表示で提供することがますます強く求められるようになっています。砂糖、塩、カロリーなど、健康に配慮が必要な成分に対しては、特にその要求が強まっています。また、二酸化炭素排出量の少ない製品を求める消費者が増え、代替肉などへの需要の増加につながっています。小売業者からは、二酸化炭素排出量の情報が求められており、最近ではその対象に、自社の事業以外で発生する排出量を指すScope3排出量も含まれるようになってきています。

世界的にエネルギーと食品の価格が高騰する中、食品・飲料メーカーは、環境と財務面の両方から、エネルギー効率の改善、廃棄物の削減、再生可能エネルギー(風力、太陽光、バイオガス)の使用を進める必要性に迫られています。

 

ヴァイサラの科学

科学は、このようなすべての課題を解決する方法をもたらしています。ヴァイサラはその多くに積極的に関わっています。ヴァイサラは気象観測装置を提供する世界有数のメーカーであり、科学者に気候変動と異常気象を追跡できる手段を提供しています。ヴァイサラの産業用計測機器を使用することで、食品・飲料の製造工程の管理を次のような点で改善することができます。

  • 効率の向上
  • 製品の一貫性と品質の確保と向上
  • エネルギー消費の削減
  • 廃棄物の削減
  • コストの削減
  • 業界の持続可能性の向上と、気候変動への取り組みの支援

ヴァイサラの技術は食品・飲料業界で広く採用されています。以下で多数の例を紹介しますが、ヴァイサラは気象事業では世界的に評判が高いものの、食品・飲料業界において知名度はそれほどでもありません。食品・飲料業界であまり知られていない分、知っている企業にとってきわめて強力な資産となっているかもしれません。

ヴァイサラのブランドを作り上げているのは、「よりよい世界に向けての観察」という会社のミッションを、主に次の4つの価値基準によるイノベーションを通じて実現するということです。

  1. 顧客重視:顧客のニーズを満たす計測ソリューションを提供する
  2. 先駆的なイノベーション:好奇心を原動力に継続的な改善を推進する
  3. コラボレーション:パートナー、関係者、世界の科学コミュニティと協力する
  4. 完全:誠実、多様性、尊重、信頼性、持続可能性

食品・飲料業界では、農業から加工、貯蔵、流通、小売、廃棄物管理にいたるまで、バリューチェーンのあらゆる段階でヴァイサラの製品が利用されています。

 

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Food processing from agriculture to consumers

ヴァイサラの技術

ヴァイサラの製品開発計画はすべて、精度と長期的な信頼性を必須条件として進められています。そのため、ヴァイサラの製品は世界的に高い評判を確立し、現在では、地球以外の惑星にも設置されています。現在、ヴァイサラの湿度センサと圧力センサは、地球上のすべての大陸で運用されているほか、NASAのキュリオシティローバーとパーサベイランスローバーにも搭載されて、火星でも稼働しています。

 

湿度

ヴァイサラの中核技術の中には、業界標準といわれる計測方法があります。たとえば、湿度は、ほぼすべての業界で行われている最も一般的な計測です。1973年、ヴァイサラは世界初の高分子薄膜による静電容量式湿度センサ HUMICAP®を開発しました。この製品は長期安定性があり、結露、汚れ、ほとんどの化学物質に影響されないなどの大きな利点を備えていたことで、計測の精度と信頼性が劇的に向上しました。その結果、ヴァイサラの湿度プローブは、乾燥、調理、ベーキングなどの食品プロセスで日常的に使用されています。湿度計測の用途はほぼ無限にあります。たとえば、食品中に過度の水分があると腐敗を引き起こす可能性があるため、湿度計測が行われています。

 

二酸化炭素(CO2)

二酸化炭素は植物が成長するために光合成をするときに使用されるため、園芸業者が生産量を増やすには温室のCO2レベルを高めることが一般的です。CO2は炭酸飲料や生鮮食品の製造施設でも使用されており、これらのプロセスはすべて厳密な管理が必要であるため、ヴァイサラのセンサ技術に最適な用途です。

ヴァイサラ CARBOCAP®二酸化炭素センサは、ファブリ・ペロー干渉(FPI)によるシリコンベースの小型波長可変フィルタが特長です。このフィルタによって基準計測が可能になり、光源の劣化、光路の汚染などによる変化が補正されます。そのため、CARBOCAP®センサは長期安定性に優れており、校正のドリフトやセンサの異常を気にする必要がなくなります。

 

屈折率計

屈折率計は、飲料や果物などの製品内の糖の含有量を計測する方法としてよく知られていますが、ヴァイサラ インラインサニタリー屈折率計は、食品・飲料業界における数えきれないほどの用途で、プロセスのモニタリングと管理に日常的に使用されています。たとえば、食品・飲料の製造プロセスでは、Brix値と乾燥固形分の計測が広く使用されています。

他の多くの液体濃度計測法とは異なり、ヴァイサラの屈折率計は粒子、気泡、結晶、色の影響を受けないため、液体の識別や成分濃度のモニタリングを行う幅広いソリューションに使用できます。ヴァイサラの屈折率計は、EHEDG認証と3-A認証を取得していることです。これらのサニタリー規格により、食品の製造・加工における衛生状態が維持されます。

ヴァイサラのインライン屈折率計の用途例を反対側の表に示していますが、ビール醸造工程のすべての段階に関わっていることからわかるように、ヴァイサラのインライン屈折率計は高い汎用性を備えています。

  1. マッシング:出口パイプで麦汁の濃度を計測する
  2. ロータリング:濃度を計測して、すすぎを止める適切なポイントを検出する
  3. 麦汁煮沸:麦汁の濃度と重量を計測することで、麦汁が必要な濃度に達した瞬間を判断する
  4. ワールプール:ワールプールの前後をモニタリングして、固形物がすばやく効果的に除去され、すっきりとした苦い麦汁が生成されていることを確認する
  5. 冷却-発酵前に、苦い麦汁に正しい量の溶解固形分が含まれていることを確認する
  6. 発酵:プロセスに関するリアルタイムの情報を提供し、発酵がいつ完了するかを正確に判断できるようにする
  7. ろ過と熟成:酵母除去中の品質管理
  8. 充填とCIP:充填とCIPプロセスを継続的にモニタリングすることにより、自動化、無駄やコスト、エネルギー使用量の削減を実現する
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Beer brewing process

 

バイオガス

さまざまな国や組織がネットゼロの達成を目指していることで、世界的に、再生可能エネルギーと温室効果ガス排出量削減に大きく注目が集まっています。バイオガスは、農業や食品生産で出る廃棄物を利用する機会をもたらし、化石燃料に代わるエネルギー源となります。また、バイオガスプロセスでは発酵残渣が発生します。これは栄養豊富な肥料になるので、食料生産で完全な循環型経済を実現できます。そのうえ、バイオガスは家庭や農場で使用する電力の発電に活用できます。

ヴァイサラは、バイオガスプロセスの最適化を実現する技術を開発しました。ヴァイサラのマルチガス計測機器は、バイオガスをインラインでリアルタイムにモニタリングできるという他にはない機能を持つため、バイオガスの品質向上、コストの削減、プロセスの効率化につながります。この最後の例は、食品生産から食品廃棄物の嫌気性消化にいたるまで、ヴァイサラが食の循環のすべての段階にどのように関与しているかを示しています。

 

概要

科学とは、証拠に基づく体系的な方法論に従って、知識と理解を追求し応用することだと定義できます。ヴァイサラは、食とは科学だと考えています。ヴァイサラの機器からの計測データによって、情報に基づいた意思決定が可能になり、効率を最適化できます。ヴァイサラの科学の原動力は好奇心です。ヴァイサラは純売上高の 14% を研究開発に投資して、長年にわたりイノベーションに取り組んでいます。食品・飲料業界は、ヴァイサラが開発した技術から多大な恩恵を受けてきました。しかし、ヴァイサラの科学者たちは、開発した技術よりも、まだ発見されていない技術に対してそれ以上の胸の高鳴りを感じています。

 


 

参考資料:

  1. The State of Food Security & Nutrition in the World 2021. Food & Agriculture Organization of the United Nations: https://www.fao.org/state-of-food-security-nutrition/en
  2. UN: Adaptation to Climate Change www.un.org/en/climatechange/science/key-findings#physical-science
  3. United Nations Office for Disaster Risk Reduction, Policy brief: Disaster risk reduction and climate change. www.undrr.org/publication/policy-brief-disaster-risk-reduction-and-climate-change
  4. Riddell et al. (October, 2020) The effect of temperature on persistence of SARS-CoV-2 on common surfaces. Virology Journal. https://virologyj.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12985-020-01418-7
  5. Meat plants—a new front line in the covid-19 pandemic. (July 2020) British Medical Journal. https://www.bmj.com/content/bmj/370/bmj.m2716.full.pdf