導入事例

日本特殊陶業の革新的な炭素循環構想「地域CCU®」、その実現を支える計測技術

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Japan
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二酸化炭素回収
持続可能性

IGNITE YOUR SPIRIT:生まれ変わる日本特殊陶業株式会社

日本特殊陶業株式会社(以下、日本特殊陶業社)は、1936年、現本社の所在する愛知県名古屋市にて創業。初代社長である江副孫右衛門氏は「わが国の特産品である磁器をもってプラグを生産する」を掲げ、現在も世界トップシェアである内燃機関向けスパークプラグ(NGKスパークプラグ)の製造、販売を祖業とした。以降、セラミックス素材技術の活用を主軸に数々の技術革新を成し遂げ、セラミックIC パッケージ、超音波振動子、自動車用酸素センサ、静電チャックなどの商用化に成功、事業領域を拡大した。日本特殊陶業社は現在のコア・コンピテンスとして、セラミックス素材技術やグローバル事業基盤に並び、センシング技術を挙げる。

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図1,写真1:日本特殊陶業社のコーポレートロゴおよび本プロジェクトに採用されたCO2+ メタン+ 露点同時計測マルチガスプローブ MGP261

 

2023年、同社は英文商号を変更することにともない、同社グループは「Niterra グループ」として生まれ変わった。新たなグループロゴとともに「地球を輝かせる企業となる」という志の下、世界のさまざまな社会課題の解決への貢献を通して持続可能な社会の実現に寄与することをめざす。現在、Niterra グループは国内31拠点、海外62拠点に15,644名の従業員を擁し*、注力事業分野として焦点をあてる、“環境・エネルギー”、“モビリティ”、“半導体”の分野に関する取り組みを加速している。
*2025年3月末時点

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図2: 地域CCU®の機器構成図(提供:日本特殊陶業社)

 

「地域CCU®」:その開発に求められる計測機器の要件とは?

現在、日本特殊陶業社は“環境・エネルギー” 分野の取り組みの一環として「地域CCU®**」というビジョンを掲げ、その実現をめざしている。「地域CCU®」とは、“地域全体でのCO2排出量を実質ゼロに近づける” というものだ。地域の工場などで排出されたCO2は、各種回収技術により集められ、その地域内で再利用される。さらに、SOEC水電解により水素を製造、メタネーションを介しe- メタン燃料として工場で使用する。このカーボンリサイクルの流れを巡らせる中で、地場産業などの地域的特色を生かしながら、地域の社会的課題や活性化をも果たすというユニークなビジョンだ。日本特殊陶業社は、愛知県蒲郡市にて地元企業や自治体と連携しながら、その実現に向けて着実に歩みを進めている。
** CCU:Carbon dioxide Capture Utilization(CO2 回収利用)の略

この「地域CCU®」を構成する「CO2回収装置」の開発に、ヴァイサラのCO2計測機器であるMGPシリーズなどが活用されている。工業炉やボイラといった中小規模のCO2排出源からのCO2回収を想定する本装置は、VPSA(Vacuum Pressure Swing Adsorption)方式が採用され、1 時間あたり64Nm3の排ガスを処理し、90%以上の高濃縮CO2を回収する。開発は2021年10月に開始され、2027年の上市を見据え、現在は商用機設計の段階にある。

「CO2回収装置の開発においては、当然、CO2を高精度に計測する必要がありますが、当初検討していたCO2計測機器では、除湿や長期間の安定性などの面でいくつかの課題がありました。一方、こうした課題を解消するためには、比較的複雑で大掛かりな付帯設備が必要、かつ相応のコストがかかる計測方法しかありませんでした。ヴァイサラのMGP261 によって、まずはそうした基本的な課題を解決できました」と、エネルギー事業本部カーボンリサイクル開発部 髙橋 翔太氏は述べる。

ヴァイサラのMGP261 は、非分散型赤外線吸収法(NDIR)のCARBOCAP® センサを採用したマルチガスプローブであり、CO2、メタン、露点温度を同時かつコンパクトに計測できる世界唯一とも言えるガス計測機器だ。その他の特徴を以下に挙げる。

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図3:CARBOCAP の基本構造
  • メタン、CO2 の計測濃度範囲はともに0 ~ 100%
  • 配管に直接挿入するインライン計測に対応
  • 除湿、サンプリングが不要、腐食性環境でも直接計測可能
  • NDIR 式センサ(特許)で日常的な校正が不要、メンテナンスフリー
  • MEMS 式Microglow 光源を使用、寿命15 年以上
  • 複数ガス波長、リファレンス波長の検出フィルタは電気的切替で機械的摩耗なし
  • 常時自動補正により、ドリフトを極小化
  • 国内本質安全防爆に対応

"CO2回収装置の開発においては、当初検討していたCO2計測機器では、除湿や長期間の安定性などの面でいくつかの課題がありました。一方、こうした課題を解消するためには、比較的複雑で大掛かりな付帯設備が必要、かつ相応のコストがかかる計測方法しかありませんでした。ヴァイサラのMGP261 によって、そうした基本的な課題を解決できました。

日本特殊陶業社 髙橋 翔太氏

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写真2:実証試験中のCO2 回収装置

 

「私たちが欲しいデータは、装置内のいつどこで何が起こっているのか、それをトレースするための“生のCO2連続データ” です。日常的な校正が不要となるメリットももちろん大きいですが、計測対象の気体をそのまま除湿などの加工をせずに、かつリアルタイムでCO2濃度の連続データを取得できるということは、装置開発において非常に大きなアドバンテージです。MGP261 は、よりシンプルな方法でこの本質的な課題を解決してくれました。結果的に、コストや作業負担の削減、良好な使い勝手、手離れの良さにより、試験装置上の計測点をより柔軟に増やすことも可能となります。また、インライン式のリアルタイム直接計測だからこそ、CO2の実計測値と装置制御の連動による最適化なども可能になります」(髙橋 氏)

吸着塔やバッファータンク、装置全体の大きさやメカニズムはどうあるべきか。最終的な商用化を見据えた場合、最も合理的な設計へと収斂させるためにも、実証試験装置内のキーポイントにおける気体データを、直接的、連続的かつ正確に把握することが不可欠だ。CO2回収装置開発における必須要件を、MGP261は満たす。なお、日本特殊陶業社の開発チームでは、CO2回収装置の開発に並行して「メタネーション装置」の開発も進めている。メタンの同時計測が可能なMGP261 は、そちらの装置開発においても本領を発揮している。

 

“開発” から“実用” へ:構想実現を支える計測機器の進化

「私たちのめざすCO2回収装置は、もちろん大きな企業様にもお使いいただけるものになりますが、「地域CCU」のコンセプトに従い、最終的にはより小規模な企業様でも積極的にご活用いただけるような、使い勝手のよい製品とすることをめざしています。そこで、装置サイズ、メカニズムを極力シンプルにしながらコストを抑え、最大限の費用対効果をご提供したいと考えています」と、エネルギー事業本部 カーボンリサイクル開発部部長 梶谷 昌弘氏は述べる。

より透明性のあるカーボンクレジットの取引を想定すると、今後は出力側での実測値が求められていくはずだと考えています。こうした展望を鑑みても、非常に高い精度で長期間安定的に“生の情報” を連続計測でき、よりシンプルになったMGP241 は、CO2回収のプロセスにおいて必須の選択肢となるように思います。

日本特殊陶業社 梶谷 昌弘氏

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写真3:実証試験中のCO2 回収装置に接続されたMGP261(フロースルーアダプタオプションを用いて接続)

 

昨年、ヴァイサラは新たにCO2・露点温度計測用のマルチガスプローブMGP241 を販売開始した。MGP241は、MGP261の機能をよりC02回収装置向けに特化した製品だ。メタンの計測機能と防爆仕様を除外することで基本価格を下げ、よりコンパクトな筐体サイズとすることで使い勝手も向上し、装置内のCO2連続直接計測もより手軽となる。特に回収後CO2のターゲット濃度レンジである90 ~ 100% の高濃度CO2計測を最も得意とし、これらの要件に適応しながら高いコストパフォーマンスを発揮する唯一の選択肢とも言える。

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図4:実証試験中のCO2回収設備の基本構成図

 

「現在、温室効果ガスの排出量の算定は、理論値であり、入力側での燃料使用量に排出係数を掛け合わせたものを基準にしています。しかし、より透明性のあるカーボンクレジットの取引を想定すると、今後は出力側での実測値が求められていくはずだと考えています。こうした展望を鑑みても、非常に高い精度で長期間安定的に“生の情報” を連続計測でき、よりシンプルになったMGP241 は、CO2回収のプロセスにおいて必須の選択肢となるように思います」(梶谷氏)

梶谷氏は、今後こうした脱炭素技術の実用化、普及を加速する上で「導入から運用に至るまで、つまりCAPEX、OPEX の両面からの総合的な生涯コストのさらなる削減が不可欠」と述べる。ヴァイサラは、本社チームとも緊密に連携しながらお客様と展望を共有し、必要な機能を見極めながら開発を進める。また、ヴァイサラのその他の特色として、同氏は「外資系メーカーながら、和文資料もしっかり用意され、技術的な質疑応答にも非常にレスポンスが早い」と述べる。

日本特殊陶業社のCO2 回収装置、メタネーション装置の開発には、マルチガスプローブのMGP261、MGP241の他、より低濃度なCO2計測プローブであるGMPシリーズ露点計DMPシリーズなどもご活用いただいている。ヴァイサラは、約90年にわたる技術革新の歴史が支えるハイエンド計測機器メーカーとして、製品力に「人の力」を加えた総合的ソリューションの提供を通じ、本プロジェクトの実現の一助となるべく引き続き尽力する。

 

MGP241の主な特徴

  • 独自の日分散型赤外線吸収方式CARBOCAP® センサ
  • CO2と露点の同時計測が可能
    • CO2濃度 0...100 vol-%
    • H2O濃度 0...25 vol-% *露点 -10~+60℃
  • 配管に直接挿入するインライン式連続計測
  • 日常使用におけるメンテナンスフリー

 

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写真4, 5:2024年販売開始のCCUS 向けCO2+ 露点同時計測マルチガスプローブ MGP241とMGP261のサイズ比較およびMGP241の軽量コンパクトな筐体