富士フイルム富山化学株式会社様 データセンターを活用した規制遵守モニタリングで グローバルヘルスケアカンパニーの未来を描く

Logger on wall
Japan
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ライフサイエンス

富士フイルム富山化学株式会社様(以下、富士フイルム富山化学様)は2018年10月1日付で診断薬・治療薬の新薬開発を加速させるため、新会社として新しい一歩をスタートしました。 富士フイルム富山化学様は「インフルエンザ治療薬」「アルツハイマー型 認知症治療薬」など広範な領域で有望な新薬候補を保有し、世界的な企業への開発品導出実績を多数有しています。今後は新薬研究を担う富士フイルムと共に「予防~診断~治療」の全分野をカバーする総合ヘルスケアカンパニー実現を目指し、更なるシナジーを追求されています。

医薬品の適性使用を推進するため、国際的な規制にも準拠可能な品質保証体制の確立を全社的な対応で積極的に進めておられます。

ヴァイサラの環境モニタリングシステム(viewLincシステム)は 2013年、研究開発部門での採用を皮切りに、徐々に拡張され、 現在では倉庫管理部門、品質管理部門でも運用されています。 本書では最新のクラウドベースサーバーを活用しヴァイサラ viewLincシステムを運用されている富士フイルム富山化学様 の全社的な品質システムのベストプラクティスをご紹介します。

研究本部

富士フイルム富山化学様の研究本部では、GMP非対象管理エ リアを管轄していますが、現行適正製造規範(以下、cGMP)と、米国食品医薬品局(以下、FDA)21 CFR Part 11に対応でき、ア ラーム通知、レポート機能等による信頼度が高いモニタリングと して世界的な運用実績があるヴァイサラviewLincの導入を決 定しました。2017年、それまで併用していた他社システムのサポート期間が終了するタイミングで、全ての管理エリアをヴァイサラ社のviewLincモニタリングシステムに統一しました。

薬理の主要な研究対象が臨床用の菌株 であることから、医療施設等から菌株を収集し、フリーザーで保管していますが、フリーザーの不具合等が発生し、検体を損失することが研究本部にとっての最大のリスクの一つです。

ヴァイサラviewLincシステム導入以前は、他社の温度ロガーを使用していましたが、逸脱アラートが電話だったため、すぐに対応ができないこともありました。 ヴァイサラviewLincシステムでは、設定した閾値を超えたり通信エラーが発生した場合、自動的にメールでアラート通知 が送信されます。そのため、菌株を別のフリーザーに移し変える等、迅速な対応が可能で、このような是正処置により、菌株の損失リスクが大きく低減しました。

また、このviewLincのアラート通知機能は、cGMPの遵守と手順の簡素化にも役立っています。査察時も、このシステムのGxP準拠のレポートにより、迅速に温度・湿度の逸脱を直ちに評価し、逸脱が 許容可能な範囲であることを立証できる ため、治験薬、原薬管理の面からも有効 です。ロガー内蔵の電池により、停電時も ロガーの中にログが残り、事後に詳細な解析ができることも非常に大きなメリットです。

以前は、各ロガーのデータを研究員が数時間おきに収集していましたが、電波が途切れたり、ペーパーチャートではインク切れや出力エラー等が発生していました。また、複数台のサーバー管理も必 要でした。さらに、立入制限エリアもあるため、リモート管理ができるヴァイサラviewLincシステムは、研究員が機器の管理に費やす時間や負担を大きく低減しました。現在ではveiwLincシステムを利用して、データは遠隔地の富士フイルム グループのデータセンターで一括管理され、バックアップやアップデート、トラブル対応等もデータセンターで管理されて います。

「今後は、治験薬もPIC/S (PIC/S: 医薬品査察協定および医薬品査察協同スキーム)やFDAを意識して取り組む必要があることを見据えています。アラート通知機能は、逸脱の発生を迅速に察知することができる ため、cGMP遵守にも役立っています。また、自動化されたモニタリング システムは、研究員が機器の管理に費やす時間を大きく低減しました。」

研究本部
低分子医薬品研究部
マネージャー
堀 英明 氏

生産管理部(倉庫管理部門)

生産管理部(倉庫管理部門)のヴァイサラviewLincシステム導入には2014年 に日本のPIC/S加盟が決定した事が大 きな動機となりました。当時は、温度マッピング等の基準が確立されておらず、社 内で十分な理解が浸透していませんでした。国際的な規制と査察対応へ本格的 な取り組みを始めた頃に、ヴァイサラが 開催していたウェブセミナーに参加しました。ウェブセミナーではGMPの概念や 準拠のための実践例が解説されていました。富士フイルム富山化学様ではヴァイサラの製品を導入することがマッピングとモニタリングでcGMP準拠を推進するための品質管理として最も有効なアプ ローチだと実感しました。また、全社的な 取り組みが重要だと捉え、品質保証部門と連携し、関連部署にも参加を要請しま した。

ヴァイサラviewLincシステム導入以前は、数種のロガーと多様な形式のデータ管理は煩雑で大変でした。 現在運用しているヴァイサラviewLinc システムでは7倉庫分のロガー情報を一台のPC上で管理でき、閾値設定したア ラーム通知により逸脱が起こりそうな状態を直ちに把握できます。

また、viewLincシステム設置以前は査 察時には7倉庫分の複数の形式のデータを提示し説明するために大変手間がかかり労力を要しました。ヴァイサラ viewLincシステムでは、改ざん防止機能があるため、レポート自体が有効な倉 庫環境の監査証跡となります。簡潔な同 一形式のレポートフォームを提出できるので説明しやすく、自信を持って査察に 対応できます。さらにヴァイサラのデータロガーを用 い、倉庫マッピングでは、夏季と冬季ワー ストポイントの位置を特定することがで きます。場所によってはロガーが置きづらい箇所がありますが、ネットワークがあ れば設置や移動が容易なヴァイサラロ ガーはメリットがあります。

「FDA査察の際も、査察官の捉え方と日本企業の考え方の違いを感じることがあるため、欧米での規制改正の情報だけでなく、それに対して現地の各企業が実際にどのようなことを経験し対応しているのかを知ることは大きな意義があると考えています。また海外の最新のマッピングの現況を知ることで自社 の将来的な行動計画が描けるのではないかと思います。これからもヴァイサラが持つ様々な知見を活用したいです。」

生産管理部(倉庫管理部門)
マネージャー 
吉田 修 氏

品質管理部

品質管理部では、主力商品である注射剤は無菌製剤であるため、様々な温度帯条 件で設定されたインキュベータを数十台運用し、微生物試験を実施しています。その際、温度逸脱がないよう厳密に管理できる信頼性の高いモニタリングが必要とされます。

ヴァイサラviewLincシステム導入以前はインキュベータ毎に、様々なタイプのロガーを使用していたため、データ記録様式が様々で、運用管理が非常に煩雑でした。数十台あるインキュベータのデータを1日に数回確認し、データ保存容量が小さいロガーは毎週記録抽出作業が必要で、電池や記録紙等の消耗品交換が頻繁に発生するものが多くありました。このような状態ではデータ欠損の懸念がありました。

温度記録データはラボラトリー査察時の対応にも影響する重要な記録であるため、今後のグローバル市場を見据え、国際的な対応が可能な機器の導入が検討されました。その結果、センサの正確性、データインテグリティ確保、グローバルなサポート体制において国際的に評価 されているヴァイサラviewLincシステ ムが2016年に採用されました。ヴァイサラviewLincシステム導入によって、環境モニタリングデータの信頼性確保のみならず、毎日数回必要であった温度記録の確認作業から解放され、作業効率も向上しました。

またPCで全てのロガーのレポートを管 理でき、自動レポート印刷を設定しておけば、レポートが自動配信されます。このレポート機能により、業務フロー全体の 合理化が大きく促進され、部内では1年 間に300時間の作業時間の低減を実現しました。

運用から約3年経過しますが、ロガーの測定値の校正結果はほとんどずれることが なく、安定して正確な温度湿度を測定できています。またヴァイサラのアフタサー ビスの迅速な回答と臨機応変な対応に部署内のスタッフは満足されています。

現在では全てのロガーのデータを一括 管理できるので、査察時のデータ提出や 説明も容易になりました。FDA査察を受 ける際、近年ではデータインテグリティ に対応しているかどうかを厳しく審査さ れます。viewLincでは経過が改ざん防 止機能を保有した監査証跡として記録さ れるので、事象の説明を記入すれば、簡 潔なレポートとして提示できるため、査 察官の質問事項に対して迅速かつ適切 な回答ができます。

最近のデータインテグリティでは年次の監査が厳しく求められていますが、富士フイルム富山化学様では、ヴァイサラ viewLincシステムの監査証跡機能を活用して月に1回トラブル発生の有無を確 認しています。このような定期確認を実行している企業かどうかも審査の観点として重要になっています。富士フイルム 富山化学様では確立された品質システムの中に環境モニタリングシステムが組 み込まれていることで、監査に対する先見的な対応を可能にしています。

「今後は逸脱が起きた場合に、論理 的に説明できる機能やシステムを有するかどうかがより重要視されてくるのではないでしょうか。ヴァイサラviewLincシステムで効率化と品 質システムの確立という両輪が達 成できました。」

品質管理部 検査グループ 
チーム長 
杉浦 陽子 氏

課題

  • 査察時の履歴レポート作成: 規制準拠徹底のためには、規制要件を準拠していることを証明し査察官を納得させることが必要ですが数種 類のロガーの多様な形式のデータ 記録で論拠を示すことは容易ではありませんでした。
  • 検体の損失リスク: 研究本部ではフリーザ等の故障で収 集した検体を損失するリスクを回避するためのシステムが必要とされていました。 品質管理部では無菌製剤の品質を保証するために微生物試験の培養 温度の厳密な管理が必要でした。
  • データ収集作業の負担: 1日に数回、数十箇所のロガーデータ を収集し、週次のデータ抽出や電池や記録紙等、消耗品の頻繁な交換も大きな労力を要しました。
  • 煩雑な機器管理: 電波が途切れたり、ペーパーチャー トの消耗品管理、複数の物理サーバーの運用など、多様なロガーの記録データを担保することには限界がありました。

ヴァイサラviewLincシステムの ソリューション

  • レポート自動作成機能: viewLincシステムのレポートは、監 査証跡やアクセス管理など、米国食 品医薬品局(FDA)21 CFR Part 11 (連邦規則第21条第11章)に準拠しています。
  • アラーム通知機能: 任意の閾値を設定し、ユーザー設定 が可能で多様な通知オプションによっ て、EメールやテキストでPCや携帯電話にアラームを送信できます。
  • リモートモニタリング: 1台のPCから全ての計測ポイントを モニタリングでき、リアルタイムで状 況を把握し管理できます。
  • 冗長性がある記録の保存: データロガーの履歴はviewLinc サーバー、ユーザーのPC、および計 測地点の各データロガーのメモリに保存されます。
  • 安全なアクセス: viewLinc許可に基づく安全なアク セス管理で遠隔地からでもモニタリング環境の確認が可能です。

メリット

  • 規制準拠: viewLincの改ざん防止機能により、 レポート自体が有効な査察データとなります。簡潔で迅速なレポート作成機能により、規制当局に準拠を示すことができました。
  • 製品とプロセスの保護: メールによるアラート通知により、モ ニタリングエリアで逸脱が起こりそうな状態を把握し、リスク回避のための対応策を迅速かつ適切に講じることが可能です。
  • 業務の効率化: 機器の管理や、データ収集に費やす作業時間を大幅に削減できました。品質管理部では1年間に300時間の作業時間の低減を実現しました。
  • メンテナンスの簡素化と セキュリティ向上: データは富士フイルムグループ様のクラウドサーバー上で遠隔地のデータセンターで一括管理され、安全なデータのバックアップや運用管理の向上にもつながります。

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