Capsol社は廃棄物発電プラントの燃焼排ガスからのCO2回収でヴァイサラのCO2プローブを実証

Capsol and Vaisala Team on location
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二酸化炭素回収
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持続可能性

 

Capsol社が開発した、高温炭酸カリウムを用いたCCS技術は従来のソリューションに比べてさまざまな利点を持ち、廃棄物発電(WtE)プラントの排ガスに適している。ヴァイサラの新しいCO2プローブMGP241は、プロセスの最適化と高いCO2回収率の維持に貢献する。 

CapsolGO
図1. CapsolGO CO2回収装置の概要

 

アプリケーション

Capsol Technologies ASA(以下、Capsol社。本社:ノルウェー・オスロ)のモジュール式CapsolGO CO2回収プラントは、高温炭酸カリウム水溶液を用いたCO2回収技術を採用し、炭酸カリウム水溶液はCO2と水と反応を起こす: 

 

Chemical equation. Capsol case.

この反応は、温度およびCO2の分圧によって反転させることが出来る可逆反応であり、炭酸カリウム溶液は、エネルギー損失を低減する特許取得済みの熱回収工程を備えた吸収塔(スクラバー)と脱離塔(ストリッパー)を循環する。これにより、従来のソリューションと比べてCO2回収ユニットの運用コストを約40%低減できる。さらに、アミンなどの溶媒に比べて、炭酸カリウムが安価で、無毒かつ不揮発性の化学物質であることが利点として挙げられる。

回収されたCO2は液化された後、サイト内の貯槽に保管され輸送に供される。回収CO2の用途としては、飲料業界や温室などが考えられる。図2に、代表的な炭酸カリウムプロセスの簡略フローダイアグラムを示す。 

Capsol-case-Figure2-JA.png
図2. 炭酸カリウムプロセスの簡略模式図

 

Capsol社のシステムでは、CO2が炭酸カリウムに結合する吸収塔は二段構成で、CO2の計測ポイントは3カ所ある。排ガス入口、二段の中間、そしてCO2リーンガス(CO2除去後排ガス)が廃棄物発電(WtE)プラントへ戻されるスクラバーの出口である。

入口側のCO2濃度計測は、スクラバーへのCO2充填量、すなわち除去すべきCO2量の推定に用いられる。一方、出口側のCO2濃度計測は大気への残存排出量を示し、最初の計測ポイントと組み合わせることでCO2回収率を算出できる。これはプラント全体の効率にとって重要な指標である。 

スクラバー二段の中間位置での計測は、プロセスのより深い洞察を提供する。第1段スクラバー通過後のCO2濃度がすでに低い場合は、スクラバーが良好に機能していることを示す。逆に、第1段通過後の濃度が入口レベルに近い場合は、プロセスが最適に機能していないことを示唆する。

第1段吸収塔通過後のCO2値に基づいて調整可能なプロセスパラメータとしては、例としてスクラビング材の温度や流量が挙げられる。3つの計測ポイントは図3に示しており、3つの電動バルブが入口・中間・出口の各位置からのガスを共通マニホールドへ導入する。 

Capsol
図3. 3つのプロセスガス流のサンプリング位置。切り替え弁とマニホールドを示す。分析計への試料ガスはマニホールド上部から採取し、余剰ガスは下部から排気する。

 

Capsol社のノルウェー施設で計測性能を実証するための広範なラボ試験を行った後、ヴァイサラのCO2プローブを現場試験のためにCapsolGOシステムへ設置した。

現場試験では、NDIR技術に基づく抽出式プロセスガス分析計との比較を実施し、コンパクトなプローブが、従来の抽出式ガス分析計に比べてコストと設置スペースを大幅に抑えつつ、同等の計測結果を提供できることを示した。 

MGP241試作機は、QAL1認証済みのCO2排出監視用ガス分析計の出口に設置したフロースルーアダプターに取り付けた。これにより、両機器が同じガスを測定し、結果を直接比較できるようにしている。 

単体設置の場合、MGP241は、、たとえば図3に示すサンプリングマニホールドなど、プロセス内に直接取り付ける。別の方法として、ガス流路ごとに個別のプローブを使用すれば、多点サンプリング方式に伴うデータの欠落なしに、すべての計測点についてリアルタイムの洞察が得られる。

 

結果

3つの計測点におけるCO2濃度を図4に示す。単一のCO2計測器で3点のサンプルガスを順次計測しましたが、図では3点のサンプルガスを個別のトレンドグラフとして分離して表示している。グラフの平坦な部分は、計測器が他の2本のいずれかの流を計測していた期間に相当する。

ヴァイサラの新しいMGP241の性能を評価するため、基準器の出力を横軸、ヴァイサラ機器の出力を縦軸にプロットする比較計測を実施した。 

Capsol-case-Figure4-JA.png
図4. 入口・中間・出口のガス流における代表的なガス濃度 

 


入口位置と出口位置で3回連続の計測を行い、中間位置では1回の計測を実施した。各計測では、両機器から最低30の計測値を収集した。抽出式の基準器は乾き基準で計測していたため、MGP241試作機で計測した実際の湿度値に基づく乾きガス補正を実施した。

表1には、各計測の平均値と、このデータに対してプロットした校正曲線のパラメータおよび相関係数をまとめている

図5は同じデータをグラフ表示したものだ。試験結果は2つの手法の間で良好な一致を示し、ヴァイサラの結果における計測回間のばらつきは基準器よりも小さく、手法の良好な繰返し性と再現性を示している。 

表1. MGP241プロトタイプ(AM)と基準器(SRM)のCO2計測値の比較 
 SRM, vol-% CO2AM, vol-% CO2
出口  #1

0.78

1.12

入口 #1

16.50

17.05

中間 #1

15.51

15.32

出口  #2

0.73

1.10

入口 #2

17.88

16.96

出口 #3

1.48

1.30

入口 #3

16.87

16.96

 

y = ax + b

傾き a

0.97854

切片 b 

0.2227

相関係数 R2

0.9984

 

Capsol-case-Figure5-JA.png
図5. 表1のデータと校正曲線のグラフ表示 

 

結論

CapsolGOモジュール式CCSプラットフォームは、排ガス中CO2濃度が3〜30 vol%の幅にわたる各種産業でのポイントソース炭素回収に対し、柔軟でスケーラブルなソリューションである。

MGP241は、このようなコンテナベースのコンパクトなソリューションに最適で、設置スペースを最小限に抑えられるうえ、可動部がなく校正ガスも不要。さらに、DCSシステムへ直接データを提供する。

Capsol Technologies社のイノベーション責任者であるAnders Grinrød氏によれば、このコンパクトなインライン計測器はCapsol社の回収プロセスの監視に適しており、ラボ試験と現場試験の双方で良好な性能を発揮している。MGP241は導入および立ち上げも非常に容易で、Capsol社とヴァイサラの合同チームが1時間未満で作業を完了した。 


[1] QAL1またはEN 15267-3認証はガス分析計の性能仕様を対象としており、米国の40 CFR 60付属書Bに記載の性能仕様に相当する。 

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