医薬品製造における液体計測:|プロセス解析工学ツール(PAT)|としての屈折率

K-Patents ウェブセミナー:医薬品有効成分(API)の開発と製造における屈折率(RI)のメリット
Daniela Kokkonen
Daniela de Kokkonen
Research Scientist
Published:
産業計測
ライフサイエンス
液体計測

健康はきわめて重要な社会的および経済的資産であり、効果的な薬の開発は人間と現代社会の発展と深く関わっています。かつてない数の病気が治療、予防、および管理できるようになっていますが、新たな医療条件や病気の出現に伴い、医薬研究者は常に新薬を開発研究しています。

薬は 2 つの要素からなります。病気を治療する成分である医薬品有効成分(API)と、薬を人間または動物の体に届ける伝達手段である添加剤です。医薬研究開発と製品工学の重要な焦点は、新しい API 成分を研究し、将来的にはオーダーメイド医療も視野に入れた、革新的な新しい治療法を開発することです。

医薬品製造の複雑さ

新薬開発はハイリスクで高コストな、長期にわたるプロセスです。参考までに、タフツ医薬品開発研究センター(Tufts Center for the Study of Drug Development)は、薬を 1 つ市場に出すには 20 億米ドルを超えるコストが必要だと見積もっています。また、Pharmaceutical Journal によれば、臨床段階に入った薬のうち市場に出るものは、10 個にわずか 1 つです。さらに、1 つの薬を開発するのには 10 ~ 15 年程度かかり、販売できるようになった頃には、10 年足らずで高い投資コストを回収することもあります。新薬開発に関わるリスクのバランスをとるために、多くの医薬会社は、特許の切れた製品に着目したり、特許にわずかに手を加えたりして、ジェネリック医薬品を製造しています。

医薬品の製造に関する厳しい規制と、それに伴って上昇する運用コストも、製薬会社にとって課題です。医薬品製造には、最終製品があらかじめ決められた仕様を満たすためのシステムを要します。バッチプロセスで個々の段階に分けて薬を生産するのが従来のアプローチで、長い保管期間と、段階ごとの品質チェックがあります。バッチ生産では、中間生産物を次の生産ステップのために別の施設に移動しなければならない場合もあります。このアプローチはコンプライアンスと高品質の製品が担保されますが、大きなボトルネックとプロセスの非効率性も生み出し、全体の生産時間を引き延ばすとともに生産コストを大幅に上昇させます。

ひいては製薬会社の業績に影響し、最終的には製品の価格として患者と社会に影響します。同時に、薬の価格を下げる圧力の高まりにより、製薬会社は新しい作業方法を模索しています。多くの業界リーダーは研究開発に多額の投資を行い、医薬品の開発時間を短縮しプロセスのコスト効率を向上できる技術的なソリューションを研究しています。  

連続生産(CM)の実装

アメリカ食品医薬品局(FDA)は、公衆衛生を保護および増進する取り組みの一環として、医薬品の革新と近代化を支援する任務の最中にあります。これに基づき、FDA はプロセス分析技術(PAT)新規構想を立ち上げました。加えて、プロセス理解のための十分な情報を得る手段として、即時計測と分析ツールの利用をサポートする枠組みも公開しました。PAT 戦略はまた、医薬品およびバイオ医薬品生産においてバッチプロセスから連続生産(CM)に移行するための適切な基金を提供しています。

連続生産(CM)を実装するためには、プロセスを十分に理解し、受け入れ材料の種類を最小にする管理戦略が必要です。許容逸脱誤差を設定し、監視と制御のための適切なプロセス工学ツール(PAT)を定義するために、その薬の重要品質特性と、それに影響する生産変数を特定する必要があります。創薬の初期段階からのリアルタイム計測を利用して大量のデータを収集し、そこから科学的知見を得ることで、新薬開発に関わるリスクを軽減し、一貫した高品質を実現する堅牢なプロセスを設計できます。

PAT ツールとしての屈折率

PAT では圧力、温度、pH のような従来のプロセスセンサだけでなく、新しいインライン分析器技術も使用します。最先端技術の 1 つは屈折率(RI)という、光の屈折に基づく液体濃度の直接計測です。RI 計測は他の産業で何十年も採用されてきました。たとえば、製紙・パルプ業では黒液の固形分の計測、砂糖産業では製糖におけるBrix 値計測が挙げられます。しかし、PAT 新規構想が開始するまで、医薬品分野ではほとんど未開拓のままでした。

RI の大きなメリットは、プロセス屈折率計によりインラインで計測できるため、連続生産に移行する製薬の現在の潮流を支援できることです。プロセス屈折率計は主に液体濃度の計測、監視、制御に使用されます。これらの計測は製薬プロセスにおいても、プロセスの多くの段階が液体培地で行われるために重要です。しかし、計測の原理である屈折率により、医薬品の開発と処理に関してさらに多くの機会を提供できるケースは、むしろ従来にはなかった用途にあります。

すべての化学物質は固有の屈折率を持つため、屈折率計測は生成物判定において、密度計測や電導率計測よりも正確であることが示されています。この他にない特性が、屈折率を他の用途で PAT 分析ツールとして使用できる可能性を示しています。たとえば、異なる溶媒間または溶媒と生成物間の界面検出や、反応物質が生成物に変わるにつれて混合物の RI 値が変化する場合の反応モニタリングに使用できます。インライン屈折率計測は、プロセスを観察する手段と、従来の試験所におけるライン外試験では得られない情報を提供します。

屈折率は基礎プロセス理解に大きな可能性をもたらす

ヨーロッパのある大手製薬会社による数年前の研究では、API 製造だけで屈折率を活用した 11 の可能な用途が特定されました。科学者の結論によると、RI をリアルタイムで計測するとプロセスに固有のプロセスプロファイルが得られ、これはリーン開発とプロセスの拡大のためのリファレンスとして使用でき、最終的に医薬品開発の労力と時間を大幅に削減できるということです。

屈折率計測のメリットは API 製造に限られません。RI 計測はすでにバイオ製薬プロセスに幅広く適用されており、今日では屈折率計は発酵、細胞培養、ワクチン、タンパク質、血漿、酵素生産などの監視用途に使用されています。

屈折率は基礎プロセス理解のための革新的な手法となりつつあります。さらに、屈折率はコスト効率の高い堅牢なプロセスと、製品のばらつきを低減する制御戦略を設計するために必要な、さまざまなプロセス動的特性と化学反応を調査するために役立ちます。上記はほんの一例ですが、製薬会社が将来に目を向け始め、屈折率計が製薬プロセスで最大限に活用される中で、今後も利用機会が拡大していくことでしょう。

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詳しく知りたい場合は、ライブ配信のウェブセミナーに登録して、医薬品有効成分(API)の開発と製造における屈折率(RI)のメリットについての議論をご確認ください。

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Comment

Nuno Pinto

Oct 9, 2019
I'm a scientist in biopharma, I'm interested to know more about the RI equipment and applications.
Could I have access to the webinar and the referenced study "a large pharmaceutical company in Europe few years back identified 11 potential applications for refractive index solely in API manufacture".

Thank you,
Nuno

Janice Bennett

Oct 18, 2019
Dear sir,
Thank you for your comment! An application engineer will contact you shortly...

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