FDA査察対応のポイント

米国において、医薬品、医療機器、栄養補助食品の製造、または現行適正製造基準(cGMP)の規制対象となる製品の製造・輸入を行っている事業者に対しては、米国食品医薬品局(FDA)による事業用施設の査察が実施されています。

連邦食品医薬品化粧品法では、米国内の登録医薬品製造施設は、少なくとも2年に一度FDAによる査察を受けることが義務付けられています。医薬品の製造開始時のほか、前回の査察の際に同様の工程で問題が認められた場合、製造方法や新規の工程に大幅な変更があった場合、あるいは工程が特に複雑である場合など、状況により査察の頻度が増えることがあります。こうした査察の取り組みを強化する方針がFDAから発表され、事業者はそれに備える必要があります。

査察の実施方法

査察時には、査察官が裏口からこっそり施設内に入って手短に調べるのでしょうか。それとも正式な手続きを踏んで査察を行うのでしょうか。査察対象者は、事前に通知を受ける場合も、受けない場合もあります。査察官が事前に訪問を通知する義務はなく、予告なしに訪ねてくることもあります。しかし、裏口からこっそり工場内に入って短時間で調べて回るような方法は認められていません。

事前通知の有無にかかわらず、査察官は施設に到着するとFDA Form 482を提示しなければなりません。提示がない場合には皆さんの方から要求してください。また、査察官は皆さんによる確認のためにFDAの正式な身分証明書も提示しなければなりません。Form 482には以下のように、査察官が行うことができる内容と、査察官が取得してはならない情報が明記されています。

  • 査察官は、施設への立ち入り、観察、サンプルの収集、職員への聴取、および規制対象製品の製造に関する記録の審査を行うことができる。
  • 査察官は、個人情報(研修記録を除く)、財務諸表、売上データ(出荷データを除く)、価格データ、および研究記録の提示を求めてはならない。

査察官が調べる内容

査察内容を知るには、まずFDAの査察実施マニュアル(IOM)を読むのが良いでしょう。IOMは、FDAの査察方針や、実地調査官と査察官の業務手順についての主要な指針をまとめた文書です。一般的には、査察官は以下の問いに対する回答を得るために査察を行います。

  • 現行適正製造基準(cGMP)を遵守しているか。
  • 職員は規制とcGMPに精通しているか。
  • 研修、モニタリング、コンプライアンスのプログラムを明示した文書があるか。

IOMによると、FDAは「(完結、未完結を問わず)確認し得るあらゆるプロセスのバリデーションプロトコル、活動、データおよび情報の監査と評価、ならびに企業に対するあらゆる問題点の報告」を実施します。

応対の仕方が重要

査察に対しては二つの考え方があります。つまり、査察を通常業務に対する侵害や迷惑とみなす考え方と、業務の実態を伝えてシステムやプロセスを改善する機会とみなす考え方です。査察官が望むのはもちろん後者です。

自分自身または自分が関わっているもの(部署や企業など)に対する査察は、たいていある程度の批判を伴うため、面倒に感じるのもやむを得ないことです。しかし、そうした批判を前向きにとらえることが重要です。なぜなら、査察は規制の遵守を促し、品質が高く、安全性と収益性に優れた、人々の役に立つ製品の製造につながることを意図するものであるからです。

継続的な学習が必要

査察が求めるものを理解した上で、それに対応できるよう、備えることが大切です。
査察について概要や対応に関する、有益な情報を提供しているセミナー(多くは無料)を常にチェックしておくようにしましょう。

また、モニタリング、アラーミング、GMPに準拠した報告書の作成に関するソリューションについて、当社Webサイトでご覧いただけます。

Bruce McDuffee(ブルース マクダフィー)
ヴァイサラのライフサイエンス部門マーケティングマネージャー。

同部門は、製薬、医療機器、食品加工、半導体製造の分野に向けた制御環境の計測、モニタリング、バリデーションに関するソリューションを提供。現在、世界各地で開催される湿度とcGMPに関するセミナーで講師を担当。