導入事例

OOYOOの独創的なCO2回収分離膜技術、その社会実装を加速する計測技術

導入事例:OOYOO様
Japan
Published:
二酸化炭素回収

膜で拓くCO2回収の未来:
京大発ディープテック・スタートアップ、OOYOO

猛暑や豪雨、干ばつ、山火事⸺ 気候変動の影響は、もはや観測事実として世界中で共有されている。各国、各企業がGHG削減を迫られる一方、セメント、石灰、鉄鋼、化学のプロセス排出や廃棄物発電の燃焼排ガスなど、GHG削減が難しいHard-to-Abate産業は依然として数多く存在する。低コストかつ大規模に運用できるCO2回収技術への需要は、かつてなく高まっている。

株式会社OOYOO(以下、OOYOO社)は、この課題に独自の分離膜技術で挑む。OOYOO社は2020年、京都大学iCeMSのイーサン・シバニア教授の研究成果をもとに設立されたディープテック・スタートアップ。高性能な高分子ガス分離膜の開発を手掛け、その用途はガス分離全般に及ぶ。

「社名のOOYOOには、特定の意味はありません」と代表取締役の大谷 彰悟氏は語る。「それは、何にでもなれる可能性をもっているということ。私たちの分離膜も、どのような気体、どのような場所、どのような規模にも適用できる可能性を秘めています」(大谷氏)

そのOOYOO社がいま向き合うのが、地球規模の課題であるCO2の分離回収だ。高い選択性と透過速度を武器に、これまで補助金を含め累計約20億円強を調達。2026年10月時点では、鳥取県のバイオマス発電所で日量100kgのCO₂回収実証に取り組んでおり、2026年内には日量約1トン規模への拡大を計画している。

OOYOO logo with MGP241
図1,写真1:OOYOO社のコーポレートロゴおよび本プロジェクトに採用されたCCUS向けCO2 + 露点計測マルチガスプローブMGP241

 

2026 年、某火力発電所に設置された100kg/日量のCO2 回収装置および鳥取県のバイオマス発電所での実証試験装置
写真2,3:2026 年、某火力発電所に設置された100kg/日量のCO2 回収装置および鳥取県のバイオマス発電所での実証試験装置

 

なぜ「膜」なのか:アミン吸収法との比較から見える特徴

OOYOO社は、グローバルな膜分離技術プロバイダーとして、小中規模の排出源にとどまらず、大規模排出源も含めたCCUSのキーイネーブラーとなることを目指している。

分離膜モジュールの仕組みおよびモジュールユニットの一例
図2, 写真4:分離膜モジュールの仕組みおよびモジュールユニットの一例

CO2回収技術の代表的な方式としては、アミン吸収法が挙げられる。吸収塔でアミン溶液とCO2を化学反応させ、再生塔で加熱してCO2を放出させる。長年にわたる実績があり、大規模な排ガスにも適用でき、高いCO2回収率と純度が得られる。しかし、このプロセスにおいては熱と蒸気が必要であり、吸収塔、再生塔、熱交換器で構成される設備は、設置場所を選ぶ。また、特に小~中規模の排出源においては、導入・運用コストが相対的に重くなりやすい、といった課題がある。

膜分離は、こうした課題にアプローチできる。膜分離は、化学反応ではなく分圧差によってCO2を選択的に透過させる原理であり、再生熱を必要としない。設備構成としても、基本システムをシンプルかつコンパクトなモジュールに収め、必要容量に応じてそれらを増減できる、フレキシブルなモジュラー型を採用できる。

ただし、膜分離もまた、発展途上の技術でもある。CO2の選択性、透過速度、大型化、排ガス成分への耐久性、量産性⸺ 高性能な膜材料を開発すること、そして、規模化が可能な商用CO2回収システムとして仕上げることが課題だ。

OOYOO社の分離膜は、複数のポリマーの組み合わせによって性能を引き出す。本来トレードオフの関係にある「高い透過速度」と「高い選択性」を両立させ、より省エネかつコンパクトなCO2回収設備を可能にする。しかも用いるのはコモディティレベルのポリマーであり、量産性も確保できる。

“分離膜の省スペース性は、圧倒的な優位性です。私たちの分離膜は進化を続けており、まだまだ小さくできます。また、膜分離は熱エネルギーを必要としないため、これから進む電化社会との相性もよいです。化学薬品を使わず、瞬時に変動する発電量にも柔軟に追随でき、有害な化学物質も放出しないため、環境にも優しく、あらゆる場所に設置できます。”

OOYOO社 代表取締役 大谷 彰悟氏

「京都大学のイーサン・シバニア教授の技術をもとに生まれたこの分離膜は、世界最高レベルの性能を持つ。私たちは常に大量生産を意識した技術開発を行っており、世界最高水準の性能を保ったまま、量産の一歩手前まで来ている」とCTOのラルフ・ナサラ氏は述べる。

2026年10月時点では、都市ガスボイラやごみ焼却炉などでの実証を重ね、大型化・商用化に取り組んでいる。そのひとつが、鳥取県のバイオマス発電所における燃焼排ガスからのCO2回収実証だ。

“市販のCO2センサ、分析計、自社開発の測定器。そのいずれも水分に干渉されるという課題を解決できませんでした。”

OOYOO社 CTO ラルフ・ナサラ氏

 

「計測という壁」:膜の性能を証明するために

モジュールへのガス透過試験装置に組み込まれたMGP241
写真5, 6:モジュールへのガス透過試験装置に組み込まれたMGP241

膜の性能を証明するために不可欠なのが、正確で信頼性の高いCO2計測である。しかしOOYOO社は、ここで想定外の時間を費やすこととなった。当初は市販のCO2センサや分析計、さらには自社開発のNDIR式測定器を試したが、いずれも水分の干渉という壁を解決できなかった。

燃焼排ガスは高湿である。一般的なガス分析計では冷却や除湿といったサンプリング前処理を挟む必要があり、応答の遅れ、凝縮水へのCO2の溶け込み、前処理系を含めたサンプリング設計・施工とメンテナンス負荷という代償を伴う。

そこで採用されたのがヴァイサラのMGP241だった。前処理なしに、湿ったガスをそのままインラインで測定できる、OOYOO社が評価した選択肢のなかで唯一この要件を満たした機種だ。MGP241はCO2回収向けに開発されたマルチガスプローブで、ドリフトが極めて小さンライン計測する。その特徴を以下に挙げる。

・CO2濃度の計測範囲は0 ~ 100vol%
・ 配管に直接挿入するインライン計測に対応
・ 除湿、サンプリングが不要で、高湿環境でも直接計測が可能
・ NDIR式センサ(特許)で日常的な校正が不要、メンテナンスフリー
・ 約7秒サイクルの高速応答
・ CO2と湿度(露点)を同時計測

OOYOO社は分離膜の供給側、透過側、濃縮側のそれぞれにMGP241を設置し、CO2濃度から膜性能をリアルタイムに評価している。

顧客サイトにて検証中のCO計測・回収キットおよびCO2計測・回収キットに組み込まれたMGP241
写真7,8:顧客サイトにて検証中のCO計測・回収キットおよびCO2計測・回収キットに組み込まれたMGP241

 

開発から実用へ:計測データが支える次のステージ

実測された回収率は、設計・シミュレーション値との一致度を確認する指標となり、前処理系を不要とすることで設置スペース、初期コスト、メンテナンス頻度、応答時間の面でも効果が得られている。こうしたデータは開発段階の評価にとどまらず、膜モジュールが実プラントで稼働する段階では、製品CO2の品質保証、モジュールの状態監視、膜の劣化・異常検知、回収量の算定にも活用され、いずれも高い精度と信頼性が前提となる。

前述の通り、2026年10月時点では、OOYOO社は鳥取県での日量1トン級の実証に向けて開発を進めており、分離膜およびモジュールとして、2026年度中の商用化を目指している。また、約5m²の設置面積で日量100kgのCO₂を回収できる小型CO₂回収装置の販売をすでに開始している。

また、技術普及を促進すべく、MGP241を内蔵し、CO2計測・回収が一体となったコンパクトなキットの開発も進めている。ポンプ、バルブ、流量計、ドレンを備え、排出源に接続するだけで迅速かつ簡易にCO2計測および回収実験が開始できる。取得データは遠隔モニタリングで集約、分析され、CO2回収の実現性や必要な膜モジュール仕様の算定へと活かされる。併せて販売、レンタルなど、ユーザにとって利便性の高い事業モデルも検討している。

OOYOO社は、独自の膜分離技術によってCO2回収市場に大きな変化を起こそうとしている。その社会実装を確かなものにするには、技術の磨き込みと、性能、成果を客観的に裏付ける計測技術が欠かせない。ヴァイサラは、今後もMGP241をはじめとする計測ソリューションを通じてOOYOO社の挑戦を支え続ける。

“CO2回収においては、信頼性の高い計測が必須です。ヴァイサラのインラインプローブのように、低コストかつシンプルで信頼性の高い計測は、排ガスからのCO2回収というチャレンジングな課題に挑む私たちにとって、非常に合理的な選択肢です。”

OOYOO社 代表取締役 大谷 彰悟氏

 

MGP241の主な特徴

  • 独自の非分散型赤外線吸収方式 CARBOCAP®センサ
  • CO2と露点の同時計測が可能
    • CO2濃度0…100 vol-%
    • H2O濃度0…25 vol-%*露点-10~+60℃
  • 配管に直接挿入するインライン式連続計測
  • 日常使用におけるメンテナンスフリー
     
CARBOCAPの基本構造および軽量コンパクトな筐体
図3, 写真9:CARBOCAPの基本構造およびMGP241の軽量コンパクトな筐体