カリフォルニアの森林火災で発生した煙の粒子がヨーロッパにまで到達

Californian wildfires
Reijo Roininen
Product Manager
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大気環境・公衆衛生の保全
気象学
気象・大気環境

世界気象機関(WMO)は2020年9月21日、カリフォルニアの森林火災で発生した煙が大西洋を越えヨーロッパ、具体的にはフィンランドに到達したと発表しました。煙は高度数kmにあるジェット気流に乗って、一週間ほどで移流しました。したがって、煙による地表の大気環境への影響はありません。一時煙雲は2,000万 km²を超えていました。NASAはフィンランド上空における今世紀最も広い煙雲の一つになると予測しました。

次の画像は、煙プルームが高度2〜5kmで中央ヨーロッパまで約9,000km移流した様子を示しています。

NOAA(アメリカ海洋大気庁)大気資源研究所
著者は、ここで使用されている移流拡散モデルHYSPLITおよびREADY ウェブサイト の提供について、アメリカ海洋大気庁(NOAA)大気資源研究所(ARL)に感謝の意を表します。

煙に彩られた素晴らしい夕日

9月末、カリフォルニアやオレゴンから遠くフィンランドにまで移流してきた粒子により美しく彩られた夕日が見られました。これはまた、一部の大気汚染がこれほど広範囲に影響を及ぼすことを示しています。シーロメータやその他のリモートセンシング機器により、これらの汚染物質を検知し、必要に応じた対策を講じることができます。 

フィンランドの夕日
画像:Sami Lehtonen


北米で発生した煙は遠くヨーロッパまで移流することが可能であり、この煙は特定の方向から風が吹くと大きな渦を巻く煙を形成します。前回フィンランドまで煙が移流したのは、2019年6月に北米で発生した森林火災のときでした。時々、ロシアにおける森林火災で発生した煙がフィンランドまで移流します。前回、ロシアからの煙プルームによりフィンランド東部の大気環境が悪化したのは2010年7月~8月でした。

煙の層と雲を明確に検出

「9月22日、粒子の層はフィンランド南部にありました。これらの層は、以下に表示されているヴァイサラ CL51 シーロメータのプロファイルデータではっきりと確認できます。プロット図は観測されたバックスキャッタプロファイルを24時間の時系列で示しています。鉛直方向に高度15kmまでの範囲を観測しています。色は信号の強度を示しており、青色は弱い信号、赤色は強い信号を表しています。夜間、高度6kmに雲があります。雲の下の高度1.5~4.5km付近の大気中に煙の層がはっきりと画像内に見ることができます。午前中は高度200~1,000mに低い雲の層があり、正午頃まで大気中の煙プルームを遮っています。午後になると、煙の層は高度1.5~4.5km付近で再び確認されました。」とヴァイサラのプロダクトマネージャーであるReijo Roininenは述べています。

ヴァイサラ CL51 シーロメータのバックスキャッタプロファイル
ヴァイサラ CL51 シーロメータのバックスキャッタプロファイル


上の図はヴァイサラ CL51 シーロメータのバックスキャッタプロファイルに基づいています。データは9月22日にフィンランドのVantaaに位置するヴァイサラの本社にて観測されたものです。ヴァイサラのシーロメータは雲の高さに関する情報のみならず、地域の状況をより理解するために必要な大気に関する情報も提供します。午後になると煙の層に加えて、高度1,200m付近に対流境界層が確認できます。これは地域の季節や条件によるものです。