アプリケーションノート

viewLincソフトウェアによる温度マッピング

Mapping with viewLinc

本アプリケーションノートでは、室内ま たはチャンバー内のマッピング試験を viewLincソフトウェアとVaisalaデータ ロガーを使用して行う方法について説明 します。

Vaisala
産業計測 ライフサイエンス

マッピングとモニタリングは非常によく 似ています。どちらも現場に設置された データロガーから一定間隔で環境デー タを収集します。大きく異なる点は、モニ タリングでは、データロガーが設置場所 に常設されており、リアルタイムでデー タを確認できることです。一方、温度マッ ピングの適格性評価では、データロガー は通常、試験ごとに異なる場所に短期 間設置されます。それ以外は似ているた め、viewLincを使用して温度マッピング の適格性を簡単に評価できます。

マッピング用ヴァイサラデー タロガー

ヴァイサラ DLシリーズデータロガーは、 世界中の規制対象用途におけるマッピン グ試験に使用されています。DLシリーズ データロガーは、電池寿命10年間のバッ テリー、大容量メモリ、および高精度セ ンサが特長です。DLシリーズデータロ ガーの一般的なマッピングでは、ヴァイサ ラ vLogソフトウェアを使用してロガーを 設定したり、試験完了時にデータをダウ ンロードすることができます。viewLinc モニタリングソフトウェアでは、ロガー の設定、データのダウンロード、結果の レポート作成などヴァイサラvLogソフ トウェアと同等の機能をより簡単に実行 できます。

ヴァイサラの新しいRFLシリーズのワイ ヤレスデータロガーは、DLシリーズデ ータロガーと同等の信頼性を保ちつつ、 ヴァイサラの VaiNetワイヤレス通信プロ トコルやデータロガーに接続するスマート プローブなど、マッピングに特化した機能 を備えています。

VaiNet connectivity diagram
RFL ワイヤレスデータロガーは、ヴァイサラ独自の VaiNet 無線技術を使用して AP10 アクセスポイントに接続します。

 

VaiNet は LoRa® 無線周波数技術を ベースとしたヴァイサラ独自の無線技術 です。VaiNetのデバイスであるRFLシリ ーズのデータロガーは、複雑な製造環境 であっても確実にデータを100m以上離 れた場所へ送信できます。障害物がない 範囲でRFLシリーズのデータロガーを使 用した場合、1km以上離れた場所へデー タを送信可能です。冷凍室から大型倉庫 まで、あらゆる環境のマッピングデータを リアルタイムに確認できます。実際に使用 すると、その効率の良さを実感していただ けるでしょう。データがリアルタイムで送 信されるため、試験データが判定基準を 満たしているかすぐに確認できます。デー タロガーを回収して確認すると試験が失 敗していた、ということもありません。

RFLシリーズのデータロガーは、オンボー ドメモリに校正データを保存できる独立 型の計測デバイスであるスマートプロー ブ(Vaisala HMP115など)を使用してい ます。このスマートプローブは、ローカル 環境でアナログ信号とデジタル信号の 変換も行います。つまり、スマートプロー ブだけを校正すればよく、データロガー は校正する必要がありません。マッピン グ試験後は、スマートプローブを外して 試験後の校正を検証できるため、ロガー 本体に校正済みのスマートプローブを装 着すれば、ロガー本体は次のマッピング 試験にすぐに使用できます。

RFLを使用すると試験後の校正検証の ためにデータロガーを取り外す必要がな いため、大規模のマッピング試験を行う お客様は効率的に試験を実施できます。

RFLシリーズのデータロガーには、マッピ ング試験を容易にするその他の機能も備 わっています。

  • NTP(ネットワークタイムプロトコル) を使用してデータを自動的に同期
  • 1分間の固定サンプルレート
  • アクセスポイントの切断に備えた30日 間のオンボードメモリ
  • データロガー上のLCDディスプレイで、 稼働状態の検証および閾値の逸脱判断 が可能
  • データの継続的記録が記録
  • アルカリ単3電池2本で18か月のバッテ リ寿命
  • プローブに応じて広範囲の温度計測が 可能。
    • -20°C~+80°C(固定プローブ)
    • -196°C~+90°C(リモート式プロー ブ)

viewLinc エンタープライズサーバーソフトウェアによるマッピング

viewLincはGxP規制対象となる業界向 けのシステムソフトウェアで、施設全体を 継続的にモニタリングすることができま す。マッピング試験は非継続的なオペレー ションで構成されているため、ほんのわず かの手順でviewLincを温度マッピングソ フトウェアとして使用できます。

viewLincソフトウェアは、ネットワーク 接続の遮断に対応し、修復するよう設計 されています。一時的に接続が切れた場 合、モニタリングデータはデータロガーに 保存されます。ネットワーク接続が再度 確立されると、データロガーに保存され たデータはviewLincデータベースにダウ ンロードされます。このプロセスを「バッ クフィル」と呼びます。viewLincを使用し てマッピングロガーからデータをダウン ロードする場合も、バックフィルを活用す ることができます。また、マッピング試験 後にデータロガーをviewLincに接続す ると、データロガーの接続が一時的に切 れたと判断され、自動的にダウンロードが 開始されます。

RFLシリーズのデータロガーには長距離 VaiNet無線信号が実装されているため、 接続したままでマッピング試験が実行可 能です。そのため、試験中のデータを常に リアルタイムで確認できます。これにより、 判定基準を満たしていないマッピングデー タをすぐに通知し、試験失敗によるタイム ロスを防ぐことができます。

Viewlinc-CMS
viewLincはトレンドデー タをリアルタイムで提供。 マッピング試験中もリア ルタイムで結果を確認で きます。

viewLincによるマッ ピングの手順

  1. IQOQプロトコルのテンプレートを 使用して、viewLincのインストールお よびバリデーションを行います。この 手順はソフトウェアのインストール時 にのみ行います。
  2. viewLincにデータロガーをインス トールします。この手順も一度だけ 行います。これにより、インストール されたデータロガーは常に認証済み のデバイスとして認識されます。
  3. viewLincにマッピングセンサの「ロ ケーション」を作成します。データロ ガーへのロケーションのリンクはド ラッグアンドドロップ操作で簡単にで きます。viewLincにおける「ロケーシ ョン」とは、仮想データストレージ上 の場所のことで、リンクしたデータ ロガーからの情報を保持します。 データロガーを試験ごとに異なる場 所にリンクすると、マッピングデータ を試験ごとに分けることができます。
  4. 閾値アラームテンプレートを使用 して各ロケーションに閾値を設定 します。一般的なマッピング試験で は、必要なテンプレートは1つだけ です。テンプレートは、のちにすべ てのマッピングのロケーションに簡 単に適用できます。判定基準には、 温度範囲や逸脱期間などを含むこ とができます。
  5. データロガーをクリアして同期しま す(該当する場合)。
  6. 試験前のデータロガーの校正を検証 します(注:お客様の多くはこの手順 を行わず、1年に一度の工場での校正 のみ実施するだけで十分と判断して います)。
  7. マッピング試験用のデータロガーを 設置します。
  8. リアルタイムでマッピングデータを 確認できるようになり、データが仕 様の許容範囲外になった場合に、通 知を受け取ることができます(RFL シリーズのデータロガー使用の場 合)。この通知は、試験を開始する前 viewLincによるマッ ピングの手順 にいつ平衡状態になったかを判断す るために使用できます。
  9. 試験を開始します。
  10. 試験が完了したらデータロガーを回 収します。
  11. データをダウンロードします(該当す る場合)。
  12. 各ロケーションの「アラーム履歴」お よび「ロケーション履歴レポート」を 生成します。
  13. 試験後のデータロガーの校正を検証 します。

その他の注意事項

  1. 閾値は、試験を実施する前に設定する 必要があります。アラーム閾値を使用 し て 、閾 値 を 作 成 し てく だ さ い。viewLincソフトウェアではアラー ム閾値をさかのぼって作成できない ためご注意ください。
  2. 必要なデータを確認するには、レポー トが2つ必要となる場合があります。
    1. 「アラーム履歴レポート」は、閾値 の逸脱を特定したものです。
    2. 「ロケーション履歴レポート」は、 生データおよび統計データ(各ロ ケーションの最大値および最小値 を含む)を記載したものです。
    3. さらに詳細なデータ分析を行うに は、データを .tsv ファイルにエク スポート後、スプレッドシートに インポートしてください。
  3. viewLincは企業の複数施設におけ る継続的なモニタリングを可能にす るために設計されました。マッピン グ試験はシンプルなプロセスのため viewLincの機能の一部しか使用し ていませんが、viewLincにはほかに もたくさんの機能が備わっています。

ヴァイサラデータロガーをマッピン グ試験に使用

  1. DLシリーズ
    1. 湿度および温度計測用
    2. 温度計測専用
  2. RFLシリーズ
    1. 湿度および温度計測用
    2. 温度計測専用
RFL100 with TMP115 product image
RFL100ワイヤレス温度データロガーは VaiNet独自の無線技術を使用してviewLinc に接続可能。写真ではプローブ用延長ケーブル付き。RFLシリーズのデータロガー には、温度計測専用と、湿度および温度用モデルがあります。
DL2000 product image
温度と湿度のマッピングおよびモニタリング用DL2000。 写真ではvNet PoEクレードル付き。 DLシリーズロガーは、温度計測専用モデルもあり、ドア スイッチや警報接点用のブール型チャネルも選択可能。

まとめ

ヴァイサラの viewLincソフトウェアは、GxP規制に対応するよう設計された、堅牢で信頼性の高いシステムです。継続的な モニタリングを行うソフトウェアとして設計されていますが、温度マッピング試験を管理する場合にも簡単に使用できます。 モニタリング用のviewLincを既にお持ちの場合、マッピングに使用すると、熱電対ベースの機器や場所を取る大型のデータ 収集システム、耐久性の劣るデータロガーに代わる、費用対効果に優れた効率的なシステムとしてお使いいただけます。安定 性チャンバー、冷蔵庫、冷凍庫、インキュベータ、保管倉庫およびその他の厳しい環境など、すべての標準的なGxP保管環境 のマッピングを簡単に実行できます。

viewLincソフトウェアをマッピング試験に使用すると、ヴァイサラの幅広く簡単に展開できるデータロガー、高精度セン サ、使いやすいソフトウェアを合わせて利用できます。さらに、VaiNetを使用すると、シンプルで信頼性に優れた無線接続 も利用できます。これらすべての機能により、確証の高いマッピング試験結果を提供します。

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